研究実績の概要 |
近年バイオマテリアルの研究分野において炎症・抗炎症などの生体反応を積極的に制御可能な新たな材料開発が試みられている. 一般に, 組織, 臓器の欠損あるいは障害が生じた場合,修復の有無に関係なく,最初に起こる反応は炎症である.炎症がなければ再生修復は起らないと考えられる.一方, 過度の炎症は,再生・治癒を抑制することが広く知られている.従って,免疫応答をうまく制御することは,直接病気を治療するという戦略だけでなく,従来のバイオマテリアルの効果をより促進する戦略としても有用となる.本研究では免疫制御機能に着目し,免疫調節機能を有する骨再生材料を開発することである.本研究の遂行により,「患者を治す」という再生医療の最終目的を達成し,体に移植処置を行った時に必ず起こる炎症を調節し,迅速な治療や優れた骨増生が可能となれば,バイオマテリアルの適応範囲が大幅に広がり高齢化社会の質的向上に対し極めて大きな貢献が出来ると考えられる. H30年度は,主に基準物質として用いた牛骨由来アパタイトと免疫調節機能を持ちうる多孔体材料の骨形成能,材料学的性質,その免疫応答反応を評価した.その結果特に,生体材料埋入時における炎症性サイトカインの放出挙動に関する知見を得た.助成期間を通しては,ラット頭蓋冠骨欠損内において生体材料埋入時の免疫応答の調節が骨再生を高める結果を得ており,同制御が骨再生の成否に重要な影響を及ぼすことを改めて証明した.
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