研究実績の概要 |
最終年度においては、当初計画していたNFS/sldミュータントマウスを使用予定であったが、作成手技の煩雑さの観点から使用マウスを変更し、シェーグレン症候群(SS)自然発症モデルであるIQIマウス(ヒトSS末期病変と類似したB細胞浸潤が顕著な唾液腺炎病変を形成する(SaegusaとKubota, JVMS, 1997))とした。 IQIマウスについて、コントロール群であるICRマウスと比較検討したところ、IQIマウスでは生後4か月から顕著な唾液腺炎病変が観察された。生後12か月のIQIマウスの唾液腺組織を使用し、SSに関与すると考えられるmiRNAを東レの3D-Gene miRNAを使用し網羅的に解析、同定した。その結果、コントロール群に対してmiRNA146a-5p とmiRNA146b-5pの2つがIQIマウスの唾液腺において有意に上昇していた。miRNA146は内因性の免疫、炎症性サイトカインの産生、免疫細胞の増殖などに関わっており(Pauley et al., Eur. J. Immunol. 2011. 41: 2029-2039)、この機能がIQIマウスのシェーグレン症候群様症状で観察される唾液腺炎に関連する可能性が示唆された。 これまでmiRNAの発現を制御する手法によって様々な疾患に対する治療法が実践されていることから、本研究で同定されたIQIマウスにおけるmiRNA-146a-5pとmiRNA146b-5pを利用し、新たなシェーグレン症候群の治療法や診断マーカーへとつながる可能性が考えられる。 また本研究で使用したIQIマウスがシェーグレン症候群のモデルマウスとして新たなmiRNA同定の検討に使用できることも示唆した。
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