研究課題
わが国における口腔癌による死亡者数は近年の増加傾向に歯止めがかからない。また、口腔癌の進行症例では舌や顎,頬を含む広範な切除が必要となり、命こそ助かったとしても、その代償は想像以上に大きなものとなる。よって、効率的な早期発見法の確立が急務であるが、発癌メカニズムはいまだ明らかではない。また、早期病変は視診や触診のみで診断することは困難で確定診断には病理検査が重要となるが、組織所見も多彩であり、病理組織学的評価法についても未解決の点が多い。そこで本研究では、口腔扁平上皮発癌の分子病理メカニズムについて、上皮細胞とマクロファージの相互作用の観点から解析を行った。臨床検体を用いた解析では上皮内癌を含めた上皮内病変において M2マーカーCD163を発現するマクロファージが浸潤しており、その浸潤数が悪性度(高度の上皮異形成、Ki-67 異常発現および Cytokeratin 13発現消失)に相関することを見出した。さらに培養系を用いた検討では、CD163陽性THP-1由来マクロファージ培養上清がヒト口腔ケラチノサイトの腫瘍免疫抑制因子IL-10発現を誘導することを見出した。臨床検体においてIL-10の高発現を認める症例ではCD163陽性マクロファージや腫瘍免疫抑制に関与する制御性T細胞の浸潤数が多かった。さらには、発癌過程においてM2マクロファージの局在が変化することを明らかにし、本結果が日常の生検診断に応用できる可能性も見出した。
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