研究実績の概要 |
我々は、デクスメデトミジン(DEX)がアラキドン酸代謝の過程で生じる15-デオキシ-△12, 14-PGJ2(15d-PGJ2)の産生を増加させ、これがペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)および核内転写因子(NF-κB)による転写活性を抑制し、炎症性サイトカインの産生を抑制するという仮説を立てている。H29年度は、これまでに報告しているDEXの抗炎症作用をさらに検証した。マウスマクロファージ由来株細胞のRAW264.7を用い、Lipopolysaccharide (LPS) により炎症を惹起し、DEXを投与することでTNF-αの産生抑制が認められるかを調べた。細胞を調整し、LPSのみ投与する群(LPS: 10ng/ml n=5) 、LPS+DEX投与群 (LPS: 10ng/ml、DEX: 0.1, 1, 10, 50μM 各n=5) の5群に分けた。2, 4, 6時間後、上清を回収し、ELISAでTNF-αの濃度を測定した。2時間後では、有意な変化は認められなかった。しかし、4時間後ではLPS+DEX1, 10, 50μM群において、また6時間後ではLPS+DEX10, 50μM群において有意にTNF-αの産生抑制が確認された。 次に、15d-PGJ2の測定を行った。同様に、細胞を調整し、Control群(培地のみ n=5)、LPSのみ投与する群(LPS: 10ng/ml n=5) 、LPS+DEX投与群 (LPS: 10ng/ml、DEX: 3, 10μM 各n=5) 、DEXのみ投与する群(DEX: 10μM n=5)の5群に分けた。6時間後、上清を回収し、ELISAで濃度を測定した。その結果、LPS+DEX10μM群において有意に15d-PGJ2の産生増加が確認された。これにより、DEXの抗炎症作用に15d-PGJ2が関与している可能性が示唆された。
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