研究実績の概要 |
本研究はデクスメデトミジン(DEX)がアラキドン酸代謝の過程で生じる15-デオキシ-△12, 14-PGJ2(15d-PGJ2)を増加させ、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)に作用し、炎症性サイトカインの産生を抑制するという仮説のもと計画している。 2019年度はDEXの抗炎症作用をCOX経路から検証した。まずマウスマクロファージ由来株細胞のRAW264.7を用い、Lipopolysaccharide (LPS) により炎症を惹起し、DEXのPGE2産生、COX-2遺伝子発現への影響について検証した。細胞数を調整し、Control群(培地のみ n=5)、LPS投与群(LPS: 10ng/ml n=5) 、LPS+DEX投与群 (LPS: 10ng/ml、DEX: 3, 10μM各n=5) の4群に分けた。2, 4, 6時間後、ELISAでPGE2の濃度、リアルタイムPCRでCOX-2遺伝子発現を測定した。LPSの投与により、4, 6時間後のPGE2産生量、COX-2発現量が有意に増加した。またLPS+DEX10μM群において、6時間後に有意にPGE2産生量、COX-2発現量が低下した。 そこでリアルタイムPCRを用い、PPARγの遺伝子発現を調べた。細胞数を調整し、Control群(培地のみ n=5)、LPS投与群(LPS: 10ng/ml n=5) 、LPS+DEX投与群 (LPS: 10ng/ml、DEX: 3, 10μM 各n=5) 、DEX投与群(DEX: 10μM n=5)の5群に分けた。6時間後、LPS+DEX10μM群においてPPARγの遺伝子発現量が有意に増加した。なお2017年度にLPS+DEX10μM群において15d-PGJ2の増加を報告している。これらの結果から、DEXの抗炎症作用は15d-PGJ2、PPARγを介する可能性が示唆された。
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