研究課題/領域番号 |
17K17251
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂上 泰士 広島大学, 病院(歯), 病院助教 (00735160)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 細胞接着因子 / インテグリン / CD133 |
研究実績の概要 |
癌幹細胞は癌の発生・進展のみならず再発,転移および治療抵抗性にも深く関与しており, CD133 は癌幹細胞の有力なマーカーとして考えられている.本研究では,CD133陽性・陰性口腔癌細胞の細胞接着分子の発現・機能を明らかにし,口腔癌に対する新たな診断・治療標的を探索することを目的とする.本年度は,ヒト口腔扁平上皮癌由来細胞株を抗CD133抗体を用いてCD133陽性細胞を分離した.CD133蛋白の発現を免疫組織学的に検討し,本分離方法によりCD133陽性細胞が再現性よく分離され,さらにCD133陽性細胞の全細胞中に占める細胞数の比率はわずか約0.5%であることを明らかにした.無血清単層培養系では,CD133陽性細胞の増殖能は陰性細胞と比較し低下していた.一方,無血清浮遊培養系では,CD133陽性細胞はsphereを形成したが,CD133陰性細胞は形成できなかった.しかし培養開始時に,CD133陰性細胞にCD133陽性細胞を加えることでsphere形成能を獲得し,その大きさや数は、CD133陽性細胞の割合が0.5%でほぼプラトーに達した.さらに,一部の口腔扁平上皮癌細胞株はインテグリンαvβ8を高発現していた.そこで口腔癌由来CD133陽性・陰性細胞におけるインテグリンαvβ8の役割について明らかにするため,扁平上皮癌細胞株に,哺乳動物発現ベクターまたはインテグリンαv発現ベクターを導入することで,それぞれSCCmockまたはSCCαvを作成した.さらに,インテグリンβ8蛋白の一過性発現のために,テトラサイクリン(Tet)発現誘導システムを用いてSCCmock/β8TOまたはSCCαv/β8TOを分離した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
sphere形成にはCD133陽性細胞が必要であり、CD133陽性細胞がCD133陰性細胞と凝集することでsphere形成が開始されることが明らかとなった.しかし,CD133陽性細胞が全細胞中に0.5%しか存在せず,in vivo研究における細胞の供給,選別に時間を要しており,今後手法の改善に取り組む必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,テトラサイクリン発現誘導システムを用いて一過性に,SCCmock/β8TOまたはSCCαv/β8TOのβ8蛋白を強制発現させ,それぞれの細胞におけるβ8蛋白発現の変化を経時的に解析する.また,インテグリンαvβ8発現が口腔癌細胞の増殖,遊走能,sphere形成能に与える影響を検討する.次にCD133陽性細胞とCD133陰性細胞を各々浮遊培養後,ヌードマウス背部皮下に移植し,in vivoにおける造腫瘍能を比較する.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究が当初の計画より遅れたため、実際の使用金額が使用予定金額を下回った。次年度の研究遂行のために必要な試薬、器具、消耗品の購入等に使用する予定である。
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