研究実績の概要 |
本研究は、PTCH1を責任遺伝子とする遺伝性疾患である基底細胞母斑症候群(NBCCS)患者より採取した末梢血単核球を用いて、宿主細胞に遺伝子挿入のないセンダイウイルスベクター (SeVdp)で山中四因子を導入し、インテグレーションフリー・フィーダーフリー・完全無血清培養系にて初代培養、NBCCS疾患特異的iPSC (NBCCS-iPSC) の樹立、病態モデルの作成といった一連の流れ全てを、不定要素を排除した条件で行い、NBCCSの部分症である顎骨多発嚢胞の分子・細胞レベルでの発症機構を明らかとすることを目的とした。NBCCS-iPSCの樹立・維持およびその特性解析のため培地 (無血清培地hESF)、増殖因子 (インスリン, FGF2, ヘパリン等)、抗体 (未分化マーカー, 分化マーカー)、その他多数の試薬、ピペットやディッシュ等のプラスチック製品を購入した。病態モデル作成のため、さらに、増殖因子、阻害物質、プラスチック製品を追加購入し、NBCCS-iPSCを上皮細胞あるいは間葉系幹細胞に分化誘導するプロトコールを無血清条件下に作成すべく播種細胞数、播種形態、添加因子の作用時間の調整等を行った。また、2017年6月に愛媛県で行われた第71回日本口腔科学会学術集会にて先行実験の鎖骨頭蓋異形成症及びヌーナン症候群疾患特異手的iPSCの病態モデルについて発表し、同内容の研究者と情報交換を行い、知見を深めた。
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今後の研究の推進方策 |
インテグレーションフリー・フィーダーフリー・無血清培養培地(hESF9)を用いて誘導したNBCCS -iPSCに対し、CRISPR /Cas9ゲノム編集システムにて変異遺伝子(cds2734ins.TG)の “ゲノム手術” を行う。それらゲノム手術前後(変異(+),(-))のNBCCS-iPSCそれぞれを、昨年度無血清条件で検討した分化方法にて上皮系細胞および間葉系細胞に分化させ、さらにそれらを4つの組み合わせ{(変異(+)上皮細胞, 変異(+)間葉細胞), (変異(+)上皮細胞, 変異(-)間葉細胞), (変異(-)上皮細胞, 変異(+)間葉細胞), (変異(-)上皮細胞, 変異(-)間葉細胞)}でin vitroおよびin vivo で共培養し、組織学的検討、蛋白・遺伝子発現の検討を行い病態モデルとしての有用性を検討する。
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