研究課題
本研究では、顎顔面口腔領域に病変を生じる遺伝性疾患の発症機構の解明や診断・治療法の確立を目指して、基底細胞母斑症候群(NBCCS)をモデルに、NBCCS由来iPSCを無血清・無フィーダー培養条件で誘導・樹立し、それらNBCCS-iPSCが未分化性を示すとともに、in vitroおよびin vivoにおいて三胚葉への分化能を有することを明らかとした。さらに、無血清条件での病態モデルを作成するため、健常人iPSCおよびNBCCS-iPSCを用いて上皮系幹細胞・間葉系幹細胞の分化誘導実験を行った。上皮系幹細胞への分化誘導では上皮系マーカーであるKRT5とTP63の遺伝子・蛋白レベルでの有意な上昇を認め、間葉系幹細胞への分化誘導ではFACS解析においてCD73/90/105陽性細胞が70%以上を占めることが示された。さらに、誘導した上皮系幹細胞及び間葉系細胞をTypeⅠコラーゲン内で無血清培養条件下に三次元培養を行った。その結果、間葉系幹細胞の単独培養は困難であったが、上皮系幹細胞を含む培養であれば間葉系幹細胞の含不含にかかわらず、三次元培養可能であった。 一方、上皮単独あるいは共培養開始2週間後の組織切片のHE染色像において、健常人とNBCCS由来の組織はいずれもシート状に単層の基底層様の構造を形成し、健常人とNBCCSの間で明らかな差は認めなかった。なお、CRISPR /Cas9ゲノム編集システムを用いてNBCCS-iPSCの病原変異遺伝子の“ゲノム手術”を行ったが、ゲノム手術を端遂げた細胞群の分取は達成しえなかった。
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口腔組織培養学会誌
巻: 28 ページ: 23, 24
巻: 28 ページ: 33,34
巻: 28 ページ: 9,10