本研究グループはTMEM16E遺伝子の異なった変異が、家族性遺伝疾患の原因遺伝子となることを報告してきた。すなわち、1)形質獲得変異の優性遺伝形質は骨系統組織、特に上下顎に遅発性の硬化性病変を伴う顎骨骨幹異形成症を起こし、2)機能喪失変異の劣性遺伝形質は上下肢帯部の骨格筋組織に特徴的な恒常性筋組織修復機構の不全が原因となる遅発性の筋ジストロフィーを起こす。 病理組織を用いた診断に免疫組織染色は大きな力を発揮するが、申請時点で保有した市販品を含むTMEM16E抗体は、絶対的な陰性対照のTMEM16Eノックアウトマウスでも非特異染色が強く、TMEM16Eの局在組織あるいは細胞内局在部位を断定することはできなかった。そこで本研究ではTMEM16Eを高い信頼度で検出できる抗体の開発を目指し、リンパ節近傍にTMEM16E発現ベクターを導入して抗原を発現させてラットを免疫する方法を実施した。その結果、抗原免疫動物リンパ節より採取したリンパ球をラット骨髄腫由来細胞と融合した抗原反応抗体産生ハイブリドーマを多数ストックし、各種抗体アプリケーションにおいて高感度検出能力を示すモノクローナル抗体産生クローンが得られた。TMEM16Eノックアウトマウス組織を陰性対照として野生型マウスの骨格筋組織の免疫組織化学染色に高い抗体価を示すクローンを選択できたことにより、今後はこのハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体を用いてマウス筋組織の免疫染色のプロトコルの確立を目指す。
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