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2017 年度 実施状況報告書

エナメル上皮腫の増殖機構の解明と分子標的薬を用いた治療戦略

研究課題

研究課題/領域番号 17K17256
研究機関広島大学

研究代表者

鳴瀬 貴子  広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (20795489)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワードAMB / JAK2
研究実績の概要

エナメル上皮腫は良性歯原性腫瘍であるが,高い浸潤能と高い再発率を有することが知られている.初代培養では少ない継代数で増殖を停止するため,長期培養が難しく,樹立された細胞株も少ないため,分子生物学的メカニズムは不明な点が多い.
我々は,テロメラーゼ活性を担う h-TERT遺伝子をウイルスベクターを用いず導入することで,エナメル上皮腫由来の不死化細胞株(AMB cell)を樹立した.AMB cellは歯原性上皮マーカーを発現し,コラーゲンゲルへの浸潤能をもつ.さらに申請者らはAMB cellがTNF-α,TGF-β, IFN-γを産生すること,外的TNF-αの刺激によってNF-κBを介した骨吸収性因子IL-6, MMP9 の発現が誘導されることを報告している.このことからエナメル上皮腫の増殖,浸潤,細胞死にはオートクライン機構を介した様々なシグナル伝達を経由する分子標的蛋白が関与していると考えられる.本研究はAMB cellを用いて,エナメル上皮腫の増殖,細胞死に関与する新規細胞シグナル機構を解明し,それら経路阻害による新しい治療法を検討することである.
本年度,AMB cellにMAPK, JAK2, AKT など様々なシグナル伝達阻害剤を添加した際の細胞増殖をMTT assayにて検討した結果,JAK2選択的阻害剤(AG490)の添加により,AMB cellの細胞増殖が抑制されたが,不死化口腔粘膜上皮細胞ではAG490による増殖抑制は起こらなかった.一方,MAPKなどの炎症性シグナル伝達阻害剤は細胞増殖に影響を示さなかった.さらに,各種阻害剤の同時添加におけるAMB cell に対する細胞障害の影響をLDH assayによって検討した結果,EGFR チロシンキナーゼ阻害剤は単独では細胞障害に影響しないが,JAK2選択的阻害剤と同時添加した際に,細胞障害が起こることが示された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

AMB cellにMAPK, JAK2, AKT など様々なシグナル伝達阻害剤を添加した際の細胞増殖をMTT assayにて検討した結果,JAK2選択的阻害剤(AG490)を添加すると,AMB cellにおいて細胞増殖が抑制されることが示唆された.不死化口腔粘膜上皮細胞ではAG 490による増殖抑制は起こらなかった。一方,MAPKなどの炎症性シグナル伝達阻害剤は細胞増殖に影響を示さなかった.さらに,各種阻害剤の同時添加におけるAMB cell に対する細胞障害の影響をLDH assayによって検討した結果,EGFR チロシンキナーゼ阻害剤が単独では細胞障害に影響しないが,JAK2選択的阻害剤と同時添加した際に,相乗的に細胞障害が起こることが示された。本年度の結果から,JAK/STAT 経路,EGFR 経路の標的蛋白がエナメル上皮腫の増殖や浸潤に重要な役割を果たしている可能性が示された.

今後の研究の推進方策

本年はエナメル上皮腫におけるJAK 経路を介した増殖,浸潤による標的蛋白を同定する.さらにエナメル上皮腫におけるJAK 経路がEGFR経路に及ぼす細胞死の影響,互いの経路やEGFRの局在に影響を及ぼす標的蛋白を同定する.このために以下の研究を計画している.
AMB cellにEGFR 阻害剤,JAK 阻害剤を単独,同時添加した際の増殖,細胞死の影響をTUNEL 法,Caspase assayやAnnexin V の発現をFACS にて検討する.JAK 経路関連蛋白に対するEGFR, JAK 同時阻害による影響を検討するため,JAK ligand添加で活性化される標的蛋白の活性に対するEGFR, JAK 同時阻害の影響を検討する.さらにEGFR の古典経路関連蛋白に対するEGFR, JAK 同時阻害の影響を検討する.AMB cell におけるEGF, TGF-bで刺激後のEGFRの発現や局在を検討し,EGFRの局在に対するEGFR, JAK 阻害剤単独.同時添加の影響を検討する.EGFR の局在に変化があれば,全蛋白抽出画分のプルダウンassay を行い,JAK/STAT 関連蛋白や増殖,浸潤の標的蛋白とEGFR の親和性を検討する.親和性を示す蛋白のsiRNA によるEGFR 核内移行の影響や,EGFR 阻害剤による細胞死の影響を検討する.EGFR局在にJAK阻害剤の関与が示されなければ,EGFR,JAK同時阻害による細胞死関連のPCR アレイを行い,影響される遺伝子の網羅的解析を行い,パスウエイ解析から標的蛋白を決定する.同定した標的蛋白の細胞内発現の影響を検討するため,当科で切除したエナメル上皮腫の試料から標的蛋白の発現や,EGFR蛋白の局在の検討を行う.ヌードマウスを用いてエナメル上皮腫増殖マウスモデルを確立し,同定した標的蛋白抑制による増殖阻害効果を検討する.

次年度使用額が生じた理由

前年度に購入予定であった物品の遅延により翌年請求分に繰り越すこととなったため。使用計画に変化はない。

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公開日: 2018-12-17  

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