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2017 年度 実施状況報告書

口腔扁平上皮癌の浸潤・転移におけるPD-L1/PD-1シグナルの関与

研究課題

研究課題/領域番号 17K17264
研究機関九州大学

研究代表者

丸瀬 靖之  九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (90784504)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードPD-L1 / PD-1 / 抗免疫チェックポイント分子抗体療法 / 口腔扁平上皮癌 (OSCC)
研究実績の概要

本研究は OSCC において PD-L1/PD-1 シグナルを介した増殖・浸潤・転移の分子機構を解明するための基盤となる研究を行うことを目的としている。
これまで我々は、OSCC生検組織の免疫組織化学的染色法を用いて、OSCCにおいてPD-L1/PD-1 シグナルが免疫抑制を引き起こし、OSCC の浸潤・転移に関与すること、及びOSCC組織でのPD-L1/PD-1 共発現が有意に生存率を低下させていることを明らかにしてきた。また、PD-L1 過剰発現株(SAS細胞)にrecombinant human PD-1 (rhPD-1) を作用させ、PD-1 から PD-L1 へのシグナル伝達は OSCC の増殖を促進すること、同様にOSCC の遊走能・浸潤能を亢進することに関しても明らかにしてきた。
そこで、本年度においては、SAS細胞に rhPD-1 を作用させた際に変動する遺伝子の発現を、DNA マイクロアレイを用いてプロファイリングし、OSCC の増殖・浸潤・転移における標的遺伝子の特定を行なった。
その結果、SASと比較して、SAS+PD-1において、腫瘍細胞の生存、遊走、分化などの機能を制御する中心的役割を担うActivaor Protein-1(AP-1) familyのうち、FosBの発現上昇(Zscore:7.618, Ratio:10.44)を認めた。また、同様にTNF Signaling pathwayにおいて、AP-1より下流の遺伝子群(Fos,Jun,Cxcl1,2,3,etc)の発現上昇が認められた。また、細胞外基質を分解し、腫瘍の浸潤・転移に寄与すると考えられるマトリックスメタロプロテアーゼのうち、MMPー3及びMMP-10に関しても同様に発現上昇を認めた。
これらのことより、PD-1はOSCCに発現しているPD-L1に作用することにより、OSCC細胞中のTNF Signaling Pathwayを活性化してOSCCの遊走及び浸潤を亢進することでOSCCの悪性化に寄与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では、標的遺伝子及びタンパク質の発現定量、およびこれらの発現抑制・過剰発現による機能解析までを本年度で終了する予定であった。しかしながら、現状では遺伝子発現プロファイリングまでしか終了していない。
これは研究代表者の研究施設からの異動、及び研究協力者との連携不足が遅延理由と考えられる。
今後はより密な連携を図り、研究を継続していく予定である。

今後の研究の推進方策

次年度以降、マイクロアレイによって得られた結果より、標的遺伝子発現について qPCR およびリアルタイムPCR を用いた定量を行う。また、標的タンパクについてウェスタンブロット法にて発現を検索し、免疫細胞化学的染色法にて in vitro における局在を確認する。
また、SAS 細胞と rhPD-1 を用いて、下記の様に標的遺伝子の発現制御を行い、機能解析を行う予定である。
1)si RNA を用いた活性阻害による機能解析;SAS 細胞に rhPD-1 を作用させたのち、si RNA を用いて標的遺伝子の活性を阻害し、遺伝子の発現量の変化や表現型および増殖、遊走、浸潤能への影響を検討する。
2)過剰発現による機能解析;プラスミドベクターを用いて、SAS 細胞に標的遺伝子を過剰発現させ、遺伝子の発現量の変化や表現型および増殖、遊走、浸潤能への影響を検討する。

次年度使用額が生じた理由

1.設備、備品費について;新規 DNA/RNA 染色試薬を使用し実験者の安全性を担保するとともDNA/RNA の損傷を大幅に低減するための青色 LED を使用したイルミネーター購入、及び本研究のデータ管理、統計作業を 遂行するためのパーソナルコンピューター本体と外付け記録装置購入は次年度以降へ延期した。
平成30年度以降行う予定である動物実験に際し小動物微小転移観察のため現在使用中の拡大鏡に付随するライトシステムを申請予定である。また、故障しているアスピレーター、ドライバス、プレート遠心機およびボルテックスミキサーについても必要であるため、研究用消耗品の費用に含めて申請する次第である。
2.旅費について;
研究代表者の現所属機関によって補填されたため、旅費に関しては使用額に差異が生じた。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Significant association of increased PD-L1 and PD-1 expression with nodal metastasis and a poor prognosis in oral squamous cell carcinoma2018

    • 著者名/発表者名
      Maruse Y.、Kawano S.、Jinno T.、Matsubara R.、Goto Y.、Kaneko N.、Sakamoto T.、Hashiguchi Y.、Moriyama M.、Toyoshima T.、Kitamura R.、Tanaka H.、Oobu K.、Kiyoshima T.、Nakamura S.
    • 雑誌名

      International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.ijom.2018.01.004

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 口腔扁平上皮癌におけるprogrammed cell death 1シグナル関連分子の発現と機能に関する研究2017

    • 著者名/発表者名
      丸瀬靖之、川野真太郎、神野哲平、松原良太、後藤雄一、坂本泰基、橋口有真、大部一成、大岩伊知郎、中村誠司
    • 学会等名
      第62回(公社)日本口腔外科学会総会・学術大会

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公開日: 2018-12-17  

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