研究実績の概要 |
これまで我々は、OSCC生検組織の免疫組織化学的染色法を用いて、OSCCにおいてPD-L1/PD-1 シグナルが免疫抑制を引き起こし、OSCC の浸潤・転移に関与すること、及びOSCC組織でのPD-L1/PD-1 共発現が有意に生存率を低下させていることを明らかにしてきた。また、PD-L1 過剰発現株(SAS細胞)にrecombinanthuman PD-1 (rhPD-1) を作用させ、PD-1 から PD-L1 へのシグナル伝達は OSCC の増殖を促進すること、同様にOSCC の遊走能・浸潤能を亢進することに関しても明らかにしてきた。 そこで、本年度においては、SAS細胞に rhPD-1 を作用させた際に変動する遺伝子の発現を、DNA マイクロアレイを用いてプロファイリングし、OSCC の増殖・浸潤・転移における標的遺伝子の特定を行なった。 その結果、SASと比較して、SAS+PD-1において、腫瘍細胞の生存、遊走、分化などの機能を制御する中心的役割を担うActivaor Protein-1(AP-1) familyのうち、FosBの発現上昇(Zscore:7.618, Ratio:10.44)を認めた。また、同様にTNF Signaling pathwayにおいて、AP-1より下流の遺伝子群(Fos,Jun,Cxcl1,2,3,etc)の発現上昇が認められた。また、細胞外基質を分解し、腫瘍の浸潤・転移に寄与すると考えられるマトリックスメタロプロテアーゼのうち、MMPー3及びMMP-10に関しても同様に発現上昇を認めた。 これらのことより、PD-1はOSCCに発現しているPD-L1に作用することにより、OSCC細胞中のTNF Signaling Pathwayを活性化してOSCCの遊走及び浸潤を亢進することでOSCCの悪性化に寄与している可能性が示唆された。
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