研究課題
IgG4 関連疾患(IgG4-RD)の病態形成においては、マクロファージ(MΦ)や樹状細胞(DC)等の自然免疫担当細胞の関与が示唆されてきたが、詳細はいまだ明らかではない。これまでにIgG4-RDの顎下腺を用いたDNAマイクロアレイの結果から、病態形成に関連し得る自然免疫関連遺伝子として、まずコラーゲン様構造マクロファージ 受容体(MARCO)を抽出し、real-time PCRにてIgG4-RDにおける有意な発現亢進を認め、免疫組織化学染色にて病変局所での特徴的な繊維化を引き起こすとされるM2MΦ上での強発現を確認した。MARCOのリガンドの1つであるナノ粒子はPM2.5や排気ガス等にも含まれており、九州大学病院(福岡県)を受診したIgG4-RD患者の発症時期とPM2.5の月別濃度を比較すると、PM2.5の濃度が高い時期にIgG4-RDの発症も多くなっていることが明らかとなった。また、自然免疫関連因子の中でも特に重要な病原体認識センサーであるToll-like Receptor(TLR)ファミリーのうちMΦやDCに発現し、ウイルスや自己のRNAを認識し自然免疫に寄与することが知られているTLR8に関しては、IgG4-RDにおいてはmRNA発現レベルでの有意差は認められなかったが、唾液腺や涙腺などの外分泌腺が障害され る臓器特異的自己免疫疾患であるシェーグレン症候群 (SS) において有意な発現亢進が認められた。すでにIgG4-RDはSSとは異なる病態であることが明らかとなっているが、関与するTLRも異なることが示唆された。一方で、TLR7に関しては、IgG4-RDにおいてはmRNA発現レベルの有意な亢進および局所における強発現を認め、ヒトTLR7トランスジェニックマウスを用いた解析から、TLR7刺激によりIgG4-RDに類似した病態を形成をすることが明らかとなった。このことは、世界初 のIgG4-RDモデルマウスの樹立さらには新規治療法の確立にもつながり得る重要な結果である。
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日本口腔内科学会雑誌
巻: 26 ページ: 77-83