研究実績の概要 |
本研究の目的は、口腔粘膜欠損、特に角化歯肉の欠損や不足を補うための軟組織移植材料として、機能的・審美的な回復はもとより、汎用性に優れた新規生体材料を開発することにある。具体的には、異種動物(ブタ)から採取した(角化・非角化)口腔粘膜に脱細胞化処理を施した非免疫原性無細胞性歯肉を移植基質として、角化歯肉の回復を試みる。このストラテジーは、現在、歯周組織再生やインプラント治療に必要な機能的・審美的歯肉形態の回復に施される遊離歯肉移植術における採取量の限界や採取側の二次的侵襲といった問題点を解決することを企図している。又、異種動物由来の移植基質を応用することで、汎用性に優れた生体材料の開発を目指す。 K-AAOMとAlloDermに口腔粘膜線維芽細胞や口腔粘膜角化細胞を播種し、培養を行い、各基質における細胞の増殖・分化のスピードや分化の方向、分泌蛋白質などをin vitroにおいて解析を実施した。上皮層の厚さや角化の程度など培養基質の組織学的・免疫組織学的な観察に加え、上皮部分のサイトケラチン(CK-5, -14, -19)の発現などについて検討を加えたところ、口腔粘膜角化細胞にてこれらの発現が明瞭であった。また、K-AAOMに口腔粘膜角化細胞塊を播種し、マウスの背部皮膚欠損部や頭蓋骨骨膜上に移植を行ったが、アテロコラーゲンスポンジに細胞を播種した場合と比較して粘膜組織の再生が優位ということではなかった。現在、K-AAOMに細胞を播種し、培養を行った場合の有用性について検討を行っているところである。
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