研究課題/領域番号 |
17K17273
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高橋 望 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (60779172)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | tRNA修飾 / 口腔扁平上皮癌 / 臨床検体 / 網羅的解析 / SAS |
研究実績の概要 |
まず始めに口腔扁平上皮癌患者の臨床検体を用いて研究を行った。 腫瘍部及び周囲正常組織を用いてtotal RNAを精製し、質量分析装置を用いてtRNA修飾の網羅的解析を行った。その結果、ある修飾において腫瘍部が周囲正常組織と比較して優位に増加していることがわかった。そこで、この修飾と患者毎の臨床データを照らしあわせて検討を行ったところ、T分類、stage分類において統計学的に優位な正の相関関係を認めた。 次に口腔扁平上皮癌の細胞株であるSASを用いて実験を行った。siRNAを用いてこのtRNA修飾特異的な修飾酵素をノックダウンし、機能解析を行った。siRNAの導入により、mRNAは25%まで低下し、それに伴いtRNA修飾が減少していることが確認された。また、この特定の修飾酵素をノックダウンすることによりミトコンドリアタンパクであるMTCO1の発言量が低下することがわかった。さらに、WST assayを行い腫瘍の浸潤能を調べた。その結果、特定の修飾酵素をノックダウンすることによって浸潤能の低下を認めた。5-FUに対する感受性が増大する傾向にあることが示された。加えて、tRNA修飾が抗がん剤耐性に与える影響を調べるために、SAS細胞に5-FUを投与したところ、特定の修飾酵素をノックダウンすることによって抗がん剤感受性が上昇することがわかった。 以上の結果より、あるtRNA修飾は腫瘍部において増加しており、その修飾の機能は腫瘍によって有利に働いていることが示唆される非常に興味深い内容が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体、細胞実験においてtRNA修飾と口腔扁平上皮癌との関係性を示唆する結果が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度の実験に続き、さらに細胞株においての研究を継続する。 tRNA 修飾酵素をノックダウンしたSAS細胞を用いて腫瘍の浸潤や増殖、抗がん剤耐性に関わるタンパク発現を調べる。また、別の口腔扁平上皮癌細胞株を用いても同様の研究を行う。 tRNA 修飾酵素を安定的に過剰発現させた OSCC 細胞株を樹立する。この細胞株作製は GFP も安定発現するようなベクターを使用する。樹立した細胞株及びコントロール株を SCID マウスに 移植し、まず増殖能や転移能の差異を評価する。GFP 発現株であるため、蛍光検出システムにより 簡便に転移の部位や程度を評価することが可能となる。続いて、組織学的解析を免疫組織化学染色 などにより行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度は科研費を利用しての学会参加がなく、次年度繰越となった。
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