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2019 年度 実施状況報告書

性差による口腔癌発症過程の違いとそれに基づく癌化予測についての研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K17276
研究機関大分大学

研究代表者

阿部 史佳  大分大学, 医学部, 助教 (00718421)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード口腔扁平上皮癌 / 口腔潜在的悪性疾患 / 性差 / 口腔扁平苔癬 / 多中心性発癌 / 性ホルモン受容体 / ヘテロ接合性消失
研究実績の概要

性差による口腔扁平上皮癌の病態の違いをみるため、まず40歳未満の若年口腔癌患者を26人(男性15人、女性11人)対象に、生活歴、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染率、エストロゲン受容体α(ERα)とエストロゲン受容体β(ERβ)の発現に差があるか否かを検索した。喫煙者は男性77%、女性患者18%と圧倒的に男性患者に多く、HPV感染率は男性 53.3%、女性63.6%(全体は57.7%)とやや女性に多かった。ERαは癌細胞の細胞質と一部の細胞核に、ERβは癌細胞の細胞核に陽性を示し、両者の発現パターンに男女間での違いを認めなかった。
若年口腔癌では性差による差を捉えることができなかったため、次に口腔多発癌患者に対象を変え、口腔潜在的悪性疾患OPMDの有無を検討した。この結果、OPMDを73.3%の症例に認め、その内訳は口腔扁平苔癬OLPが最も多く(46.7%)、次いで口腔白板症(20%)であった。またOLPを併発した口腔多発癌患者の71.4%が女性であったことから、OLPが女性の口腔多発癌の発症と関連することが示唆された。
そこで女性の口腔多発癌と男性の単発口腔癌では口腔発癌過程の違いがあるものと仮説をたて、まず早期癌18例(男性12例、女性6例)を対象に癌周囲粘膜における異型上皮の有無を検索したところ、女性では4例(66.7%)、男性では1例(8.3%)で口腔癌から離れた部位にスキップした異型上皮を認めた。このことは女性では多中心的に口腔発癌が生じやすい傾向を示しており、OLPを前駆疾患とする口腔多発癌が女性に多いことと合わせて注目すべき所見と考える。現在、口腔発癌の初期に高頻度に生じることが報告されている遺伝子変異(9p21と3p14領域のヘテロ欠失)に注目してさらに検索を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

口腔癌の病態について明確な性差を捉えることが容易でなく、予想以上に時間を要したため、分子レベルへの解析に本格的に着手できなかった。また口腔潜在的悪性病変のうち口腔白板症に注目して研究計画を設定していたが、これまでの結果から口腔扁平苔癬と口腔発癌の関連が明らかになり、研究計画の一部を変更せねばならなかったため。

今後の研究の推進方策

これまでの結果から、女性では多中心性の口腔発癌が多いことが示された。そこで多中心性発癌を示す症例と単中心性発癌症例で、性ホルモン受容体(エストロゲン受容体α(ERα)、エストロゲン受容体β(ERβ)、プロゲステロン受容体(PgR))の発現、遺伝子変異(9p21と3p14領域のヘテロ欠失)の有無の比較を行う。
さらに口腔白板症と口腔扁平苔癬について、性ホルモン受容体(ERα、ERβ、PgR)の発現と遺伝子変異(9p21と3p14領域のヘテロ欠失)を検索し、発癌様式(多中心性、単中心性)との関連性を検討する。
これらの結果をもとに、性差による口腔癌発症モデルを提案し、口腔潜在的悪性疾患の癌化予測についてのアルゴリズム構築、男女別年齢層別の口腔癌予防法、経過観察方法を考案する。

次年度使用額が生じた理由

2019年度の直接経費500,000円の内訳は、研究消耗品費110,000円、論文校閲費30,000円、論文投稿費100,000円、機器レンタル費50,000円、旅費250,000円であったが、このうち旅費250,000円のみを使用した。消耗品は2018年度に購入したものを使用したため、新たに購入する必要はなかった。また、論文投稿は行っていないため、論文校閲費と投稿費は未使用である。機器レンタルも必要がなかった。以上の理由で250,000円が未使用である。
この未使用経費は、2020年度に多中心性癌と単中心性癌の比較研究のための抗体とPCR試薬の追加購入、大分大学全学研究推進機構からの機器レンタル料、研究成果公表のための論文校閲費と投稿料に使用する計画である。

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公開日: 2021-01-27  

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