2020年度の研究計画は、口腔発癌に関連してヘテロ接合性消失(LOH)生じることが報告されている遺伝子領域の中から9p21、17p13.1、3p21.3、3p14の4領域について検索した。まず口腔扁平上皮癌のパラフィン切片からDNAを抽出したが、十分なDNA量が得られなかったためPCRが行えなかった。そこで口腔扁平上皮癌7例(男性2例、女性5例)、口腔白板症2例(いずれも男性)の切除材料からDNAを抽出して検討を行なった。この結果、9p21のLOHを口腔癌4例、白板症1例で検出した。口腔癌の性別では男性の2例、女性の2例に9p21のLOHを認めた。17p13.1のLOHは、口腔癌の4例、白板症の2例で検出した。口腔癌の性別では男性の1例、女性の3例に17p13.1のLOHを認めた。3p21.3と3p14については、女性口腔癌の1例で3p14のLOHがみられたが、他の症例ではLOHを検出しなかった。また口腔癌の3例(男性1例、女性2例)と白板症の1例は9p21と17p13.1の両者にLOHを示していた。 口腔扁平上皮癌ではp16タンパクの遺伝子が存在する9p21とp53タンパクの遺伝子が存在する17p13.1にLOHを半数に認めたが、症例数が少ないため性差とこれらの領域のLOHの関連を捉えることができなかった。また口腔白板症2例でもこの2領域にLOHが検出され、2例のうち高度異形成を伴う1例は両者にLOHの認めた。このことから白板症では異形成の出現がLOH増加と関連する可能性が示唆された。 さらに症例を増やし、口腔扁平上皮癌、口腔白板症、口腔扁平苔癬患者の性別とLOH領域の数を検討している。
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