研究課題/領域番号 |
17K17280
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中村 康大 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (90783506)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | microRNA / 腫瘍マーカー / バイオマーカー / 液体生検 |
研究実績の概要 |
・癌の遺伝子異常は経時的に変化する。癌のゲノム構造は非常に不安定で、遺伝子異常は発癌後も、増大・浸潤・転移・薬剤耐性などの全ての段階で蓄積されていく。よって、最適な治療法の選択には、リアルタイムな腫瘍の遺伝子プロファイリングが必要である。その評価には、非侵襲的に採取できる体液サンプルを使って診断を行う液体生検が有用である。液体生検を用いたリアルタイムモニタリングにより、腫瘍の形質変化のタイミングと原因の両方を予測でき、より適切な治療法への変更が可能となる。口腔癌において今後は多様な新規治療法が導入されると考えられる。よって治療法選択や再発腫瘍の発見に有用な、精度の高い分子マーカーによる液体生検、および診断アルゴリズムの開発が必要である。液体生検のカギを握るのは、診断試料とバイオマーカーである。なかでも非侵襲的かつ簡便に採取でき患者負担が軽減されることから、試料として血液に着目した。また我々は、分子マーカーとして腫瘍核酸、具体的にはmicroRNAに注目し、研究を進めている。 ・口腔癌患者からの血液の採取:研究期間中に口腔癌患者50例および健常者50例を目標に、サンプル採取を開始しており、現在口腔癌患者約40例、健常者約40例ほどのサンプルを採取している。 ・microRNAの網羅的解析:腫瘍マーカー候補となるmiRNAの絞り込みを目的として、迅速・簡便に検査が行えると考え血清をサンプルとして用いて、網羅的解析を行った。対象は、口腔癌症例10名・平均年齢67.4歳、健常者10名・平均年齢69.4歳の血清をそれぞれプールし、マイクロアレイにより比較した。先行研究のmicroRNA-X,Y,Zとは別に、候補として数個のmicroRNAを抽出した。 ・経過においては、第76回日本癌学会学術総会にてポスター発表、第29回南九州腫瘍研究会にて口演発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在研究は順調に進展している。日常の臨床において腫瘍外来チームに属しているため、術前および術後の口腔癌患者の協力が得やすく、サンプルが予想より早く集まりつつあるのが一番の要因であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
・患者コホートでの解析と口腔癌検出マーカーの同定:口腔癌患者から血液を液体生検し、網羅的解析から絞り込まれた候補マーカーを標的としたPCRベースの核酸定量を行い、健常者と比較検討することで口腔癌検出マーカーを同定する。検出法はデジタルPCRを第1選択とする。デジタルPCRはサンプル中に微量に含まれるターゲットも極めて鋭敏に絶対定量することが可能で、特にctDNAの検出において有用である。予想される問題点と対策として、デジタルPCRは増幅前の作業工程が多く、また比較的新しい技術のため予期しないトラブルも想定される。本法がうまくいかない場合は、従来から用いられている変異特異的PCRを用いる。この方法は我々の研究室でも以前より行っており、研究を問題なく遂行できると思われる。 ・治療前後のリアルタイムモニタリングと予後予測マーカーの同定:口腔癌患者の治療前後に経時的に液体生検し、候補マーカーと臨床病理学的事項との関連性を統計学的に検討し、再発、後発転移などの予後予測マーカーを同定する。再発・転移などの予後不良イベントが起きた場合、液体生検から得た分子プロファイルと臨床病理学的事項とを統計学的に検討することで、予後予測マーカーを同定する。予想される問題点と対策として、診断に使用されるマーカーは単独であることが望ましいが、1種類では癌の検出や予後不良イベントの予測に十分な感度と特異度を得られない可能性がある。その場合は検査コストおよび労力を鑑みながらなるべく少数の(2~5種)分子マーカーを組み合わせ、検査システムとして十分な検出力を有するよう調整する。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプル採取が目標数に達していないため次年度使用予定となった
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