研究課題
悪性黒色腫は口腔粘膜にも発生する悪性度の高い悪性腫瘍であり、増殖能が高く容易に肺などに転移するために予後が悪い。近年、抗PD-1抗体nivolumabなどの免疫チェックポイント阻害剤の登場により悪性黒色腫の治療成績が著しく向上してきたが、これら薬剤は間質性肺炎や大腸炎など様々な臓器に対して免疫関連有害事象をもたらすことも明らかとなってきた。そのため、悪性黒色腫の病態を正確に理解し、新たな治療法を確立する必要性は依然として残っている。マウス悪性黒色腫株B16細胞を骨形成タンパク質BMPで処理をすると形態変化をしたため、BMPシグナルと悪性黒色腫の悪性度の関係を明らかにすることを目的に研究を開始した。しかしながら、研究を遂行する中で、転写コファクターのTLE3が悪性黒色腫の増殖に深く関わっている可能性に気づき、研究の若干の方向修正を行った。データベース解析からヒトの健常皮膚、良性母斑、悪性黒色腫への変化に伴いTLE3の発現が上昇することがわかった。B16細胞にマウスTLE3の発現ベクターをトランスフェクションしG418処理を行うことでTLE3が恒常的に過剰発現するB16細胞を作製した。TLE3を過剰発現したB16細胞は増殖能が亢進し、CyclinD1などの細胞周期関連遺伝子の発現量が上昇した。この細胞を12週齢雄BALB/cA Jcl-nu/nuマウス背部皮下に接種するとコントロール細胞に比べて大きな腫瘍を形成した。一方、shRNAやsiRNAの導入で内在性のTLE3をノックダウンしたB16細胞やヒト悪性黒色腫細胞株HMV-IIでは細胞増殖能が低下し、CyclinD1やKi67などの細胞周期関連タンパク質の発現量が低下した。さらにTLE3を恒常的にノックダウンしたB16細胞をマウス皮下に摂取するとコントロール細胞に比べて小さな腫瘍を形成した。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Oncotarget
巻: 10(3) ページ: 404-414
10.18632/oncotarget.2655