研究課題
歯原性腫瘍は,歯の形成に関与する組織に由来する腫瘍の総称で,多くは顎骨内部から生じ,その多くは良性腫瘍である.この歯原性腫瘍のうち全体の30%を占め最も多いのがエナメル上皮腫である.このエナメル上皮腫の侵襲的な増大や,まれに見られる悪性化・転移には,増悪因子としてLaminin等細胞接着分子の発現や,サイトカイン等の関与が示唆されてきた. しかし,腫瘍の部位により細胞に多様性のある本疾患の悪性化に関わるメカニズムについては不明な点が多かった. さらに,本疾患は歯根吸収を伴いながら増大することから,口腔細菌への曝露が想像出来るが,それらの影響はこれまで全く検討されていなかった. 本研究では,同一のエナメル上皮腫組織から樹立された新たな3種の細胞株を用い,細胞接着因子,サイトカインに加え,細菌由来因子も含めた本疾患の増悪に関するメカニズムを分子生物学的観点から明らかにすることを目的とした. 実際にmigration assay を行うことにより、3種の全ての細胞株においてLaminin332 はエナメル上皮腫の上皮下への浸潤に関わっていることが示唆された. また口腔内細菌, 特にPorphyromonas gingivalisやFusobacterium nucleatumなどの歯周病原細菌が産生する酪酸がエナメル上皮腫からのEGFやTGFβ1の産生を促し,これらサイトカインがオートクラインにエナメル上皮腫に働くことによって浸潤に関わるLaminin332の発現を増加させる可能性が考えられた. したがって,エナメル上皮腫の悪性化・転移において,口腔内細菌,特に酪酸産生菌の局所におけるコントロールが非常に重要であると示唆された.
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Journal of Oral Science (accepted)
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