ヒトとマウスでは作用・発現が異なるアディポカインや、ヒト特異的脂肪細胞分化機序が報告されており、従来のマウスモデルを用いた肥満研究はヒトへの臨床応用に必ずしも直結するとは限らない。脂肪細胞分化や肥満発症の機序の解明には、ヒトとマウスの比較生物学的な観点での研究が必要である。本研究では、DDTを含むアディポカインの作用や脂肪細胞分化機序に関わる分子をヒトとマウスの前駆脂肪細胞を用いて検討し、その差異を明らかにすることで、ヒト特異的なアディポカイン作用と脂肪細胞分化機序の解明を目指している。 H29年度は、ヒト特異的脂肪細胞分化遺伝子の解析を行うために、ヒト患者皮下脂肪組織由来前駆脂肪細胞とマウス皮下脂肪由来前駆脂肪細胞の初代培養、分化誘導培地作製の準備を行ってきた。今後、脂肪細胞に分化誘導させてから、0日目、1日目、3日目、7日目のtotal RNAを抽出しDNAマイクロアレイ解析を行う。結果的に、多数の候補遺伝子が得られると想定されるため、前駆脂肪細胞および分化脂肪細胞での発現をリアルタイムRT-PCRにて解析し候補遺伝子を絞り込む。多数候補遺伝子が得られた場合は、脂肪細胞特異的遺伝子、脂肪細胞分化に関して機能が未知の遺伝子を優先的に検討する。 マイクロアレイ解析で得られる、脂肪細胞分化に伴う経時的遺伝子発現プロファイルそのものが、今後の肥満研究にとって、有用な情報となると確信している。
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