口腔がんの高感度かつ正確な再発・転移診断法を確立することを目的とした。口腔がん患者の術前~術後2 年までの経時的なメタボローム解析を行い、患者の予後と相関する代謝物の探索を行った。 GC/MSによる分析の結果、検出された水溶性代謝物で口腔がん患者群とコントロール群間で有意差を認めたものを対象とし、ボルケーノプロット(それぞれの代謝物質について口腔がん患者-コントロール群間の比をlog2変換し横軸に、t-検定結果のp値を-log10変換し縦軸に示した散布図)を用いて、2群間比較で顕著にかつ統計学的有意に高値または低値の代謝物質の選定を行った。今回はt-検定で p値< 0.05 、平均値の強度の差が fold induction > 1.5 (差が1.5倍以上)を対象とした結果18種類の代謝物が選定された。18種類の代謝物からより精度の高いバイオマーカー候補物質を選定するため、口腔がん患者群とコントロール群をランダムに振り分け交差検証を行った。次に、training setを用いてバイオマーカー候補物質を選定するためROC曲線を用いて、各代謝物の感度と特異度を求め、5-fold cross validationを用いて検証したそれにより、4種類の代謝物(glucose、 galactose、nonanoic acid、cysteine + cystine)が選定された。 次に、術後に再発もしくは転移をきたした症例における代謝物の変動を分析した。上記で選定された4種類の代謝物に関して、術前から再発もしくは転移が診断された時点までの経時的な変化(術後1、3、6、9、12、18、24か月)を分析したところ、有意差のある変動を示した代謝物はなかった。この原因として、再発・転移群の検体数が少ないことが考えられた。
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