研究課題/領域番号 |
17K17295
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
篠塚 啓二 日本大学, 歯学部, 助教 (30431745)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 口腔がん / エクソソーム / microRNA / microRNAアレイ解析 / ネットワーク解析 |
研究実績の概要 |
近年、がんの診断・治療をとりまく環境の大きな変化のなかで、新領域として注目されているのが、エクソソームである。このエクソソームをターゲットとし、本研究では、エクソソームを介して細胞外へ放出されているmicroRNAの存在に着目し、非侵襲性で感度の高いバイオマーカーの確立を目指し、口腔癌患者の血清及び唾液中のmicroRNAを用いて新しい診断・治療予後マーカーを探索する。また、前癌病変や口腔癌患者における実際のmicroRNAの発現量や機能解析を行うことにより、発癌のメカニズムの解明や治療開発を目指すものである。具体的には、先ずは正常口腔粘膜上皮細胞株と口腔癌細胞株5種類(HSC2, HSC3, Ca9-22, HO-1-N1, SAS)を用いて、細胞株の上清(培地)より、エクソソームを抽出した。その後、抽出したエクソソームより、microRNAを回収し、回収したmicroRNA(分泌型RNA)を用いて、Human miRNA Microarrayを使用して、マイクロアレイ解析を行った。網羅的に調べた結果、口腔癌細胞株について、正常細胞株と比較し2倍以上の発現が観察された共通のmicroRNA群として12遺伝子を同定した。これらのmicroRNA群は口腔癌細胞株において特異的に発現増強しているmicroRNAと同定した。一方、口腔癌細胞株で、2倍以下の発現が観察された共通のmicroRNA群として、6遺伝子を同定した。これたの共通するmicroRNA群は、口腔癌細胞株におちて特異的に発現減弱しているmicroRNA群と同定した。これら合計18個のmicroRNA遺伝子は、口腔癌細胞において発癌に関連する分泌型microRNAとして同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究において、本年度は、正常口腔粘膜上皮細胞株と口腔癌細胞株の細胞上清よりエクソソームの抽出を行い、その後、抽出したエクソソームよりmicroRNAを回収し、回収したmicroRNA(分泌型microRNA)を用いてmiRNA Microarray解析を行う実験手順となっている。アレイ解析を行う際には、十分なエクソソームの量が必要となる。そのため、エクソソームの抽出に時間がかかり、予定より遅れがでてしまった。しかしながら、遺伝子を思ったより絞りこむことができたので、次年度に予定されている実験を繰り上げて行える部分もあるため、調整を計っていく。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は同定されたmicroRNAを用いた標的遺伝子についてIngenuity Pathway Analysis (IPA)Softwareを用いて、Ontology解析を行い、癌関連遺伝子ネットワークの解析を行う予定である。そのネットワーク解析の結果で、有力な候補のエクソソームに含まれる口腔癌関連分泌型microRNAを絞り込み、有力な口腔癌関連分泌型microRNAについて、InhibitorあるいはPrecuesor導入により候補miRNAの発現を過剰発現あるいは発現抑制させる。形質転換細胞の変化より、形質転換細胞の性質(増殖・分裂・形態・浸潤・転移など)の変化を観察し、miRNAの口腔癌組織における機能を評価する予定である。口腔癌の発癌メカニズムの解明及びInhibitorあるいはPrecursorを用いて、口腔癌に特異的な分子標的治療の開発につなげることが期待できる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画どおり経費を使用したところ、端数が生じた。特段の計画の変更はなく、平成30年度助成金と共に消耗品、解析費、旅費等で使用していく予定である。
|