神経障害性疼痛は難治性の慢性疼痛で、長期化するとうつ病を併発する可能性がある。この治療には薬物療法が第一選択となるが、うつ病を併発している患者では投与量が多くなり、さらに長期の服用となるため、副作用のリスクが非常に高くなるという数多くの報告がある。 近年、臨床的には難治性の疼痛緩和にはレーザーによる低反応レベルレーザー治療(Low reactive Level Laser Treatment; LLLT)が有効であるとの報告はあるが、基礎的研究はほとんどない。本研究の目的はLLLTによる疼痛緩和効果における神経化学的機序を明らかにし、簡便で副作用のない治療法の確立を目指すことである。 方法として、まずはうつ病モデルラット作製後、下歯槽神経損傷により神経障害性疼痛を発症させたうつ病神経損傷ラット(OPラット)を作製した(神経損傷をさせない疑似手術ラット;Shamラットも並行して作製)。これらのラットは疼痛緩和を目的としたLLLTした群としてOP-L群とSham-L群、対照群としてOP群の3群に分けた。 この結果、OP群はOP-L群と比較して神経障害性疼痛の発症期間が長かった。行動学的検証において、OP-L群はOP群と比較して有意に疼痛閾値の上昇が認められた。病理学的検証において、灌流固定後、脳幹部を摘出し脳幹部三叉神経脊髄路核周辺の標本を作製し、神経障害性疼痛の発症・維持に関与するグリア細胞(マイクログリア・アストロサイト)のマーカーであるIba1・GFAPの免疫染色を行った。その結果、OP群と比較してOP-L群ではIba1・GFAPの一過性の早期の発現増加後、暫時減少を呈した。 以上より、グリア細胞は神経障害性疼痛の形成・維持に関与する一方、抗炎症性サイトカインを放出し、さらにLLLTは神経修復を賦活化を助けることにより疼痛緩和効果を呈するのではないかと推察した。
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