研究課題
歯の再生を実現するためには、良質で安全な細胞を十分量準備するための技術開発が必要である。これまで、サイトカインの添加や 共培養系により、iPS 細胞は歯性細胞へ分化することが報告され、iPS 細胞が再生歯作製のための細胞シーズと成り得ることが示され た。しかし将来の臨床応用を考えた場合、これらの方法には、他種細胞の混入、分化誘導効率、癌化、および分化した細胞の heterog eneity 等の解決すべき問題が残されている。幹細胞から分化誘導を行う方法の一つである遺伝子導入法は、iPS細胞の分化誘導方法として、最も有効な手段の一つである。本研究課題では、安全性の高い歯の再生に用いる細胞シーズの獲得を目的として、将来的に臨床応用が可能な基盤技術の開発の開発を目的とした。本年度ではマウスおよびヒトiPS細胞のフィーダーフリー培養法を確立したうえで、さらに歯性間葉細胞の樹立をめざし、歯性間葉細胞の前駆細胞である神経堤様細胞を樹立した。樹立された神経堤様細胞は星状の細胞形態を呈し、iPS細胞と比較して、神経堤マーカー遺伝子であるPax3、Snai1、およびSnai2の発現亢進を認めた。また、神経堤マーカーであるp75 NTRの発現を免疫蛍光により解析した結果、発現が認められた。その後、歯性細胞樹立のために最適な培養環境条件を検討したうえで、歯の発生に重要な役割を有する遺伝子が組み込まれたウイルスベクターの遺伝子導入、および複数のリコンビナントプロテインの添加を行い、神経堤様細胞から歯性間葉細胞への効率的な分化を目指した。
3: やや遅れている
iPS細胞から歯性間葉細胞前駆細胞である神経堤様細胞の樹立が達成された一方で、歯性間葉細胞への効率的な分化を行うための条件検討に時間を要している。
iPS細胞由来神経堤細胞を歯性間葉細胞へと分化させるために必須な因子を同定したうえで、天然の歯性間葉細胞のキャラクターにより近づけるための培養条件を確立する。その後、樹立されたiPS細胞由来歯性間葉細胞のキャラクタライゼーションおよび安全性の検証を行う。
当初想定していた実験方法では歯性間葉細胞への効率的に分化が進まず、実験条件の再検討を行う必要が生じた。
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Scientific Reports
巻: 9 ページ: 368
10.1038/s41598-018-36863-6