研究課題/領域番号 |
17K17310
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
新垣 真紀子 東北大学, 歯学研究科, 助教 (80610675)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒトiPS細胞 / エナメル芽細胞 / 歯 / 再生 |
研究実績の概要 |
歯胚は発生の初期段階から歯原性上皮細胞と間葉細胞間での連続した相互作用により形態形成が行われ、最終的に機能的で複雑な形態を有した歯が完成する。特に、エナメル質を形成するエナメル芽細胞は成人には存在しないため、エナメル芽細胞分化に関する詳細な分化メカニズムは未だ明らかとなっておらず、その誘導法も確立されていない。 本研究は、歯の再生医療に応用可能な細胞供給源として、ヒトiPS細胞から歯原性上皮細胞もしくはエナメル芽細胞への高効率な分化誘導法の開発を行ない、得られたヒトiPS細胞由来エナメル芽細胞を用いて、エナメル芽細胞の詳細な分化メカニズムを解明することを目的とする。我々の研究グループはすでに、エナメル芽細胞への分化には、エナメル芽細胞が分泌するエナメル基質アメロブラスチン(Ambn)や神経栄養因子であるNT-4が重要な役割をもつことを明らかにしており、マウスiPS細胞をAmbn遺伝子を発現するラット歯原性上皮細胞株(SF2)を用いて培養することにより、エナメル芽細胞に分化誘導することに成功している。 平成30年度はヒトiPS細胞をフィーダーフリー培養しながら多分化能を維持し、SF2の培養上清を用いてエナメル芽細胞へと分化誘導を行った。これによって他の細胞および動物由来成分の混入を最小限に抑えることが可能であったが、分化誘導した細胞は形態的にも間葉細胞様のものが多く、現在iPS細胞の未分化・多能性マーカー遺伝子および歯原性細胞のマーカー遺伝子の発現を確認するとともに、エナメル芽細胞への分化誘導効率について検討を行っている。また、エナメル芽細胞への分化誘導因子の1つとして着目するNT-4の歯原性上皮細胞における機能解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、計画ではヒトiPS細胞をフィーダーフリー、Xenoフリー培養に移行して、SF2細胞の培養上清を用いて歯原性上皮細胞への分化誘導を行うことで、他の細胞および他の動物成分の混入を最小限に抑え、分化誘導効率を上げるための培養方法を検討することを目的としていた。現段階では上皮前駆細胞への分化効率が低く、そのため歯原性上皮細胞への分化誘導効率が低下している。今年度も引き続きRT-PCR解析で未分化・多分化能マーカーや歯原性細胞のマーカー遺伝子の発現を確認しながらヒト由来iPS細胞の培養方法と歯原性上皮細胞への分化誘導効率を検討する必要がある。 また現在、平成30年度に行う予定であった、エナメル芽細胞への分化誘導因子の同定として、歯原性上皮細胞SF2において神経栄養因子であるNT-4が担う機能の解析を行っている。よってヒトiPS細胞の培養方法の検討とエナメル芽細胞への分化誘導因子の同定を並行して進めることができたことより進捗状況としてはおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度はヒトiPS細胞のエナメル芽細胞への分化効率の評価を行う。iPS細胞は多分化能を有するため、上皮前駆細胞へ分化制御し、エナメル芽細胞分化誘導因子を加えることで歯原性上皮細胞あるいはエナメル芽細胞への高効率な分化誘導が期待される。今後の研究計画としては上皮前駆細胞への分化制御として、ヒトiPS細胞をK-SFMで培養し、さらにBMP4コンパウンドを添加し培養することでp63およびCK14陽性の上皮前駆細胞へと誘導を試みる。 また、エナメル芽細胞への分化誘導因子の同定として、現在行っているNT-4の前駆体proNT-4の受容体であるp75NTRタンパクのSF2細胞における機能解析を行う。p75NTRタンパクは神経系において細胞増殖や分化の制御を行う受容体であるが歯原性上皮細胞やエナメル質の分化に関わるメカニズムのさらなる解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた学会参加と研究成果発表がなくなったため、主に旅費として計上していた分に余りが出たため、次年度使用額が生じた。次年度は国際学会への参加も予定しており、また、当該年度の研究成果を活かして、ヒト由来iPS細胞から分化誘導したヒト歯原性上皮細胞の解析を進める予定である。具体的には、マイクロアレイ解析やそれにより同定された因子の強制発現やsiRNAノックダウン法により機能解析を行なう予定である。さらにp75NTRタンパクの歯原性上皮細胞における機能解析も同時に行う予定である。
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