研究課題/領域番号 |
17K17317
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
黒澤 美絵 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70792282)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 小児 / 咽頭炎 / A群レンサ球菌 / 細菌毒素CF / 付着・侵入 |
研究実績の概要 |
学童期の小児が罹患する咽頭炎の主な原因菌であるA群レンサ球菌の産生する細菌毒素CF(CAMP factor)が咽頭上皮細胞への同菌の付着・侵入に対する影響を検索した. ヒト咽頭上皮細胞 Detroit562にA群レンサ球菌SSI-9野生株,およびA群レンサ球菌のCF遺伝子欠失株を2時間感染させた.その結果,血清非存在下において,CF遺伝子欠失株は野生株と比較してDetroit562細胞への付着・侵入菌数は有意に少なかった.また,Detroit562細胞に細菌毒素CF組換えタンパク質を作用させた後に,CF遺伝子欠失株を感染させたところ,CF遺伝子欠失株の細胞への付着・侵入菌数は細菌毒素CF添加濃度依存的に増加した.また,Detroit562細胞に細菌毒素CFを作用させると細菌毒素CFが細胞膜上に局在した.さらに,CF遺伝子欠失株を感染させると,細菌毒素CFは細胞膜上から細胞質へ移行することが判明した.また,異物が細胞内に侵入する際に関連があるとされる細胞膜リン脂質の構造変化に着目し,細菌毒素CFによるDetroit562細胞の膜変化について解析した.その結果,細菌毒素CFを作用させてもDetroit562細胞の細胞膜リン脂質分解酵素の活性化は認められなかった. A群レンサ球菌による咽頭炎は近年,国内における患者報告数が急増している.そのため,A群レンサ球菌感染症の発症機構の解明と病因論に基づいた有効な制御法の確立が望まれている.しかしながら,現在,A群レンサ球菌による咽頭炎予防のためのワクチンは実用化されていない.本申請研究では,細菌毒素CF を抗原とする咽頭炎予防ワクチン開発を目指しており,その成功を通じて,小児における咽頭炎発症ならびに重症化の予防研究へ発展させ,歯科学が主導となり口腔関連感染症の医療費削減にも寄与し,社会的な貢献を果たしたいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
咽頭上皮細胞へのA群レンサ球菌の付着・侵入について,細菌カウント法と免疫染色を行い,細菌毒素CFの存在により,細胞への菌の付着・侵入が亢進すること,また菌の感染により細菌毒素CFが細胞質内へ移行するという結果を得ることができた.これらの結果について,学会で報告を行うとともに,その一部を学術雑誌に掲載した.
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今後の研究の推進方策 |
A群レンサ球菌が咽頭上皮細胞に侵入するメカニズムとして,細胞の食作用に着目して生化学的に解析を行う. また,A群レンサ球菌の細菌毒素CFをマウスの静脈に投与することで,細菌毒素CF免疫化マウスを作製する.同マウスの鼻腔にA群レンサ球菌を感染させ,鼻腔組織への付着・侵入菌数について,免疫組織学的に解析する.今後は,ワクチン開発を視野に入れ,研究を推進する所存である.
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