研究課題
A群レンサ球菌による咽頭炎は小児に多く発症し,疼痛と炎症による嚥下障害を引き起こすため,口腔機能管理上からも問題視されている.近年では,国内の患者報告数が激増している.学童期の小児が罹患する咽頭炎の主な原因菌であるA群レンサ球菌の産生する細菌毒素CF(CAMP factor)が咽頭上皮細胞への同菌の付着・侵入に対する影響を検索した.計画の最終年度では,咽頭上皮細胞の食作用との関連に着目し、生化学的に解析を行った。ヒト咽頭上皮細胞 Detroit562にA群レンサ球菌SSI-9野生株,A群レンサ球菌CF遺伝子欠失株または細菌毒素CFを0~15分間作用させ,食作用に関連のあるシグナルであるAktの活性化についてウェスタンブロッティング法を用いて解析した.その結果,野生株および細菌毒素CF処理した細胞では,経時的なAktの活性化が認められた.また,ELISAの結果でも同様に,A群レンサ球菌野生株および細菌毒素CF処理した細胞ではPI3KおよびAktの活性化が認められた.しかしながら,PI3K阻害剤またはAkt阻害剤にて処理したDetroit562細胞に野生株および細菌毒素CFを作用させるた場合では,PI3KおよびAktの活性化は阻害されることが判明した.これらの結果より,A群レンサ球菌の細菌毒素CFは,咽頭上皮細胞のPI3K/Aktシグナル経路を活性化することにより,同菌の細胞への付着・侵入を促進していることが示唆された.国内外においてA群レンサ球菌感染症の発症機構の解明と病因論に基づいた有効な制御法の確立が望まれているものの,現在,A群レンサ球菌による咽頭炎予防のためのワクチンは実用化されていない.本申請研究の成功を通じて,小児における咽頭炎発症ならびに重症化の予防研究へ発展させ,歯科学が主導となり口腔関連感染症の医療費削減にも寄与し,社会的な貢献を果たしたいと考えている.
すべて 2018
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Microbiology and Immunology
巻: 62 ページ: 617-623
10.1111/1348-0421.12647