研究課題
近年、乳歯を用いた再生医療が着目されており、申請者はこれまでの研究より、幹細胞の増殖や未分化の維持に関与するWntシグナルの転写因子の1つであるlymphoid enhancer-binding factor-1(LEF-1)に着目し、乳歯歯歯髄細胞(HDDPCs)より転写因子を標的としてLEF-1陽性幹細胞の単離を行ってきた。HDDPCsへLEF-1プロモーターを配したプラスミドの遺伝子導入実験を行ってきたが、遺伝子導入効率が悪く、十分な結果が得られていなかった。そのため、哺乳類細胞への遺伝子導入効率が高いとされるpiggyBacトランスポゾンベクターを用い同実験を修正したところ、遺伝子導入効率が高くなり、薬剤耐性を持ったLEF-1陽性乳歯歯髄細胞の単離が可能となった。乳歯歯髄細胞よりLEF-1プロモーターを用いてLEF-1陽性細胞の単離が可能となったことから、本研究ではHDDPCs由来iPS細胞を用いた実験を計画した。HDDPCs由来iPS細胞から遺伝子工学的手法を用いて「LEF-1陽性幹細胞」を単離・濃縮し、その性状を解析することを目的とした。LEF-1プロモーターを配したプラスミド(pTA-LENプラスミド)を構築し、iPS細胞に最適な条件を検討した上で、HDDPCs由来iPS細胞へLEF-1プロモーターを配したプラスミドを遺伝子導入した。遺伝子導入後のLEF-1陽性細胞をG418にて薬剤選択を行ったところフィーダー細胞ごとiPS細胞が剥がれてしまう現象が認められたため、薬剤選択の条件の検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
薬剤選択の際にiPS細胞がフィーダー細胞ごと剥がれてしまう現象が認められたことは、遺伝子導入後に使用する培養液の影響が関係している可能性が考えられる。
今後は、再度HDDPCs由来iPS細胞へLEF-1プロモーターを配したpTA-LENプラスミドを遺伝子導入し、LEF-1陽性細胞を単離できないか実験を行う予定である。その際、薬剤選択の際のG418の濃度および培養液の再検討を予定している。また、実験がうまくいかない場合は、フィーダーフリー培養への切り替えも検討している。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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