研究課題/領域番号 |
17K17322
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹内 優斗 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (60721454)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | KLF4 |
研究実績の概要 |
KLF4は骨格系の正常発生、恒常性の維持に関与する転写因子であることが報告されている。これまでの報告ではKLF4は膜内骨化の過程に関連しているといった解析結果であったため、本研究ではKLF4が正常な内軟骨骨化の過程においても重要な役割を有していると仮設を立て、次の2点について検討を行うこととした。1)野生型KLF4、恒常不活性型KLF4を軟骨特異的に過剰発現したトランスジェニックマウスを作成し、その骨格の表現型を詳細に解析する。このマウスは上皮や筋肉による間接的な軟骨への影響を排除し、また生後の致死をきたさない可能性が高い。そのため、KLF4のノックアウトマウスでは得られなかった解析を行うことが可能となる可能性がある。2)KLF4遺伝子欠損マウスの頭蓋顔面、四肢、椎骨の形態形成を詳細に解析する。ヒトの骨格の大部分は、内軟骨骨化の過程で発生するため、本研究では、これらの解析を行うことで、マウス個体レベルでの内軟骨骨化へのKLF4の役割の理解に大きな前進が見られる可能性が高い。実際、骨格に形態・性状異常を認める疾患は比較的多く、先天的な発生異常を示すものや後天的に骨の恒常性維持機構の破綻によるものなど多岐にわたる。手足の骨や関節は日常生活で最も使用される部位の一つであり、その異常は日々の動作に対して著しく大きな影響を与えることが容易に想定される。本研究において、KLF4が内軟骨骨化の過程において果たす役割を解明することで、KLF4は骨格に異常をきたす疾患に対する創薬のターゲットとなりえる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KLF4遺伝子欠損マウスの骨格表現型に関して詳細に解析を行なった。解析には胎生13.5~18.5日齢のマウス胎仔を用いた。 胎生13.5、14.5、16.5、18.5日齢の上腕骨、大腿骨、脛骨、頭蓋顔面の組織切片を作成し、HE染色を行い、これらの組織すべてをスクリーニング的に解析した。 MMP13は骨の正常なリモデリングといった骨の恒常性維持に重要な役割を果たしていることが知られている。以前の申請者の研究において、KLF4を導入した軟骨細胞でMMP13の発現が有意に上昇したことから、KLF4の阻害剤の投与によるMMP13の発現量の変化をスクリーニング的に解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は軟骨特異的にKLF4、恒常不活性型(ドミナント・ネガティブ型)KLF4を発現するトランスジェニックマウスの作成と表現型解析を行う予定としている。 1)コンストラクトのクローニング 軟骨特異的に遺伝子を発現させるために汎用されている軟骨特異的エンハンサー及びプロモーター配列を含むベクター(p3000i3020Col2a1)を用いる。このベクターは軟骨発現エンハンサーを含むマウスⅡ型コラーゲンα1鎖のイントロン配列と内因性のプロモーター配列をともに含むゲノムの断片であり、汎用されているトランスジェニックベクターである。 2)トランスジーンの単離、受精卵へのインジェクション、仮親への移植、表現型解析 Transient transgenicマウスを作成し、表現型を解析する。injectionを行う断片(transgene)をベクター配列から制限酵素で遊離させる。TransgeneをC57B/6系統マウスの受精卵の前核期胚へ顕微注入する。この受精卵を偽妊娠マウスの卵管に移植する。マウスは移植後、F0胎仔を18.5日で回収する。この時、遺伝子解析のために羊膜を同時に回収する。当歯学部の施設にはtransgeneの顕微注入、偽妊娠マウスへの受精卵の移植の設備がないため、上記の下線部の操作は外注により行う。胎仔はホールマウントにてalizarin red、alcian blueで骨、軟骨を染色後、詳細に観察する。また、組織切片作成後、ヘマトキシリン・エオジンなどによる染色や遺伝子発現解析を行う。また最近、KLF4はマウスマクロファージにおける炎症性メディエーターに影響することが報告されているため、関節軟骨における慢性炎症の発生についても解析を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定したよりも購入薬品の割引料が大きかったため、次年度使用額が生じたが、次年度においてもトランスジェニックマウスの作製に関係する薬品などの物品費に使用する予定としている。
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