KLF4は骨格系の正常発生、恒常性の維持に関与することが最近報告された転写因子である。しかし、以前までの報告は膜内骨化の過程における解析結果であった。大部分のヒトの骨は内軟骨骨化の過程で発生する。骨格の形態・性状異常を認める疾患は多く、その原因は先天的な発生異常を示すものや後天的な骨の恒常性維持機構の破綻によるものなど多岐にわたる。本申請ではKLF4が正常な内軟骨骨化に重要な役割を持つと仮設を立てて研究を行った。 内軟骨骨化の過程では、軟骨成長板の肥大化軟骨細胞層で強く発現するMMP13がその進行に必須の役割を持つ。KLF4タンパクは成長板の前肥大化~肥大化軟骨細胞層に局在が認められ、一部KLF4とMMP13の発現部位が一致していた。培養軟骨細胞にKLF4を発現誘導し、MMP13の発現パターンの経時的観察を調べた。またクロマチン免疫沈降を用いたKLFによるMMPの転写割合や、Actinomycin Dによる転写抑制時のMMP13によるmRNAの分解速度を調べたところ、本研究では、KLF4によりMMP13のmRNAの分解が抑制されることでMMP13の発現レベルが上昇し、正常な内軟骨骨化を進行させることが示唆された。 内軟骨骨化では軟骨が骨に置き換わることになるが、骨芽細胞での新たなKLF4による分化制御メカニズムも見出した。申請者は以前までにKLF4が細胞自律的に破骨細胞の分化を抑制し、骨芽細胞の成熟を抑制していることを報告していたが、その詳細な機序は不明であった。一次線毛は、細胞周囲の外部環境もしくは細胞からのシグナルを伝達するためのアンテナとして機能する細胞小器官であり、正常な形成や機能は骨格系の正常発生に必要不可欠であるとされる。本研究では、KLF4が一次繊毛におけるヘッジホッグシグナルを抑制し、そしてそのことを介して骨芽細胞の分化を抑制している可能性が示唆された。
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