研究課題/領域番号 |
17K17323
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
早野 暁 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20633712)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | iPS細胞 / ダイアモンド・ブラックファン貧血 / RPL5 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究実績として、ダイアモンド・ブラックファン貧血の原因遺伝子として知られる、RPL5ハプロ不全の患者および、その健常血縁者の末梢血を採血し、それに含まれる血球細胞を単離した。京都大学iPS研究所の協力の元、この細胞に対してOCT4, SOX2, KLF4, C-MYCの4遺伝子を導入し、RPL5遺伝子の変異を持つiPS細胞を樹立することに成功した。また、患者の健常血縁者の末梢血から得られた細胞からも同様にiPS細胞を樹立することが出来た。また、本研究の対照群として株式会社リプロセルから健常者由来のiPS細胞を購入した。 次に、これらのiPS細胞から骨細胞・軟骨細胞・脂肪細胞を分化誘導させるための前段階として、既報の論文を参考にし、これらの3群のiPS細胞から間葉系幹細胞の誘導を試みた。得られた3群それぞれの間葉系幹細胞を、骨細胞誘導分化培地・軟骨細胞誘導分化培地・脂肪細胞誘導分化培地で培養し、細胞の分化能を検証した。検証方法として、組織染色とリアルタイムPCR法による特異的mRNA発現量の比較を利用した。その結果、3群全ての細胞が骨・軟骨・脂肪細胞に分化する能力を有していることがわかった。このことから、これら3群のiPS細胞から分化させた細胞が、間葉系幹細胞の性質を有していることが確認された。 次の段階として、骨細胞・軟骨細胞・脂肪細胞の分化能を3群間で比較した。比較方法は前述と同様に組織染色とリアルタイムPCR法を用いた。 興味深いことに、3群間で基質形成に差が見られたのは軟骨細胞のみであった。このことは、ダイアモンド・ブラックファン貧血の臨床所見の特徴と酷似していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では平成29年度の予定として、iPS細胞から間葉系幹細胞を樹立し、樹立された間葉系幹細胞から骨細胞・軟骨細胞・脂肪細胞を分化させること、さらにその分化能を群間比較することが目標であった。これらの目標は達成され、予想していた結果と概ね一致した結果を得ることができた。このことからこの研究の進捗状況としては、概ね順調に進展しているということが言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に予定していた細胞死の評価については、既に一部開始している。平成29年度に得られた結果から、軟骨細胞における群間の基質形成能の差を調べるために、現在、細胞死特異的タンパク質であるp53の免疫染色、および、DNAの断片化を評価するためのTUNEL染色を進めている。現在これら染色を行っているのは、軟骨細胞のみであるが、これらの染色を間葉系幹細胞から分化させた骨細胞・脂肪細胞においても同様に行う。さらに、細胞死の評価を組織染色のみでなく、mRNAレベルでも解析するため、細胞死経路で特異的に発現する遺伝子群の発現量の評価を、リアルタイムPCR法を用いて3群間で比較する。 また、現在のところダイアモンド・ブラックファン貧血における骨格異常の原因は、p53細胞死経路の活性化が原因であるとの仮説の元研究を進めているが、これを証明するために、p53細胞死経路に拮抗する薬剤を投与した条件で、軟骨細胞の分化培養を行う予定である。 平成30年度の研究計画として、幼弱免疫不全マウスを用いたin vivo実験を予定していた。しかし、当研究施設の動物舎の規則変更により、長期間実験動物を飼育することが困難となった。このため、in vivo実験計画は断念し、前年度の実験結果と、本年度計画しているin vitro実験をまとめて報告することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に高額試薬購入予定であったが、予算が足りなかった。そのため次年度予算として繰越し、試薬を購入することとした。
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