本研究の最終的な目的は、食生活の変化というような後天的因子がどのように顎骨の形態決定に関与するのか?という、顎骨形態決定に関わる遺伝情報のエピジェネティックな制御システムを明らかにすることである。 食餌性状を変化させた実験モデルはこれまで広く用いられてきたが、この研究は2次元のレントゲン写真による側面図の線計測および角度測定に基づいており、3次元の変化を詳細に検出することは困難であった。そのためH29年度には、食餌性状の変化に関連した下顎骨の3次元変化を詳細に解析するために、マイクロCTを用いた下顎骨表面形態の3次元的な形態解析手法を新たに開発し、報告した(Frontiers in Physiologyにて報告)。これらの知見より、後天的因子に伴う咀嚼活性の違いが骨表面上の部位特異的応答にいかに影響し、マウス下顎骨の3次元的な成長にどのように影響するのかという定量的所見が明らかとなった。 H29年度、H30年度にわたり、後天的因子が上顎骨の形態形成に及ぼす影響を詳細に解析した(第76回日本矯正歯科学会学術大会、94rd European Orthodontic Society Congressにて発表)。論文として報告予定である。 また、軟食を与えたマウスと硬食を与えたマウスの咬筋のRNAを用いてマイクロアレイを行い、これらの刺激に応答する遺伝子の同定と、同遺伝子のクローニングならびにリコンビナントタンパク質の精製に成功している。上記遺伝子が咬筋の性質及び下顎骨の形態形成をコントロールしているのであれば、上記遺伝子のリコンビナントタンパク質の局所または全身投与によって、咬筋の性質及び下顎骨の形態形成を制御できるのではないかと考えられるため、今後も研究を継続し、顎骨形態決定に関わる遺伝情報のエピジェネティックな制御システムを明らかにしていく。
|