研究実績の概要 |
H30年度では、得られた実験を統合するとともに、論文による誌上発表を行うための追加実験を行った。 MSCsの血管新生と破骨細胞分化に及ぼす影響についての検討を行った。その結果、以下の知見を得た。MSCsは破骨前駆細胞(RAW264)との共培養によって破骨細胞分化を抑制する。MSCsはRAW264との共培養によってRAW264の細胞増殖能を亢進させる。MSCsはRAW264を走化させる。またRAW264の走化には MSCsの発現するCCL2が関与する。 以上の結果は3題の雑誌にて誌上発表された(Abe T et al., 2018 J Dent Sci; Abe T et al., 2018 J Oral Sci; Sumi K et al., 2018 J Oral Sci)。そして、MSCsと血管内皮細胞株との共培養により、VEGF-Aの遺伝子発現とタンパク質発現を亢進させることが明らかとなった(Oki N et al., 2018 Biomed Res)。また、レーザ照射がMSCsの代謝に及ぼす影響についての検討を行った。その結果、810 nm の半導体レーザー照射によってヒト歯髄由来のMSCsの細胞増殖能及び基質代謝能に影響を及ぼすことが解明された。さらに、MSCsとCAPによる骨再生の誘導と血管新生の検討を行った。犬ビーグル種に対して口蓋裂モデルを作製し、MSCsとCAPによる移植を行ったところ、骨組織の再生が確認された。そして、実験的歯の移動モデルによって再生骨への歯の移動が確認された。以上の背景より、MSCsは、血管新生や破骨細胞に対して相互作用を及ぼすことが明らかとなった。そしてMSCsの代謝を亢進させる手段としての半導体レーザーの応用が示唆された。さらに、MSCsとCAPを併用することで顎裂部の骨再生に有用であることが示され、臨床応用の可能性が示唆された。
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