研究課題
歯根吸収は矯正歯科治療による副作用のうち、最も高頻度に認められるにも関わらず、発生機序の詳細は不明である。歯根吸収のリスク因子は報告されているものの、現在のところ消極的な対症療法しか存在しない。エナメル蛋白の主成分であるアメロゲニンは、近年、エナメル質形成のみならず、歯周組織を構成する様々な細胞に対しても生理活性を有することが多く報告されている。しかしながら、その強い極性から生理的条件下では凝集し、安定的で効率のよい結果を得ることが難しい。そこでアメロゲニンの安定した効果を引き出すためにその活性部位を探索した。フラボノイド類化合物の一種であるバイカリンは、生薬のオウゴンの主成分であり、抗菌、抗炎症作用および骨添加活性などの作用を有することが知られている。バイカリンは骨芽細胞において、OPGの遺伝子発現を促進することが報告されており、またOPGの遺伝子導入により歯根吸収が抑制されることが報告されている。そこで本研究では、アメロゲニンペプチドを矯正歯科治療へ適用させることによりセメント質の誘導が期待され、また、バイカリンにより矯正歯科治療中の歯周組織におけるOPGの代謝を調節することで、歯根吸収を抑制する効果が予想されることから、アメロゲニンペプチドとバイカリンを併用した歯根吸収を予防する新たな治療法の確立を最終的な目的とした。平成29年度では、機能性アメロゲニンペプチドおよびバイカリンの歯根吸収抑制効果の検討と、シグナル伝達経路に関する検討を行った。研究結果は、2018年度の日本矯正歯科学会にて発表を行う予定であり、論文投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、歯周組織に対する機能性アメロゲニンペプチドおよびフラボノイド類化合物であるバイカリンの影響を解明し、歯根吸収を積極的に予防する治療法を確立することを目的とした計画を立案している。これまでの研究によりアメロゲニンのC末端側にアメロゲニンの活性部位が存在することが明らかとなり、その活性部位を含む機能性アメロゲニンペプチドを開発した。平成29年度では、その機能性アメロゲニンペプチドをセメント芽細胞及び破歯細胞に添加し、細胞増殖のおよび基質産生能の評価を行い、またそれぞれのシグナル伝達経路についての検討を行った。同様にバイカリンをそれぞれの細胞に添加し、細胞増殖能および基質産生能の評価を行うとともに、それぞれのシグナル伝達経路についての検討をおこなったが、概ね順調に進展している。
平成29年度では、各細胞に対する機能性アメロゲニンペプチドおよびフラボノイド類化合物バイカリンの効果を明らかにすることができた。またそれぞれのシグナル伝達経路を解明することができた。平成30年度では、それぞれの相互作用およびin vivoでの実験を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
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