研究課題
Down症候群は、遺伝性疾患および染色体異常の中では、疫学的に最も発生頻度が高い。病因は、体細胞の21番染色体が3本あることにより、染色体不均衡を生じることである。歯科的な臨床像としては、齲蝕罹患率は低いが、歯周疾患は発症しやすいことが知られている。しかし、Down症候群と歯周疾患との分子メカニズムレベルでの関係は不明であるため、歯周疾患に関連したサイトカインネットワークが関与しているのではないかと予測し解析することを目標とした。前年度において、Eotaxin-1が正常歯肉細胞で恒常的に発言していることを確認しており、本年度はDown症候群由来の歯肉細胞にて、Eotaxin-1の検証を行う予定であった。Down症候群由来の歯肉細胞株の作製を試みたが、不死化細胞株作製に当たって長期培養を行ったところ、高頻度で核型に変化が生じ、安定して21番染色体にトリソミーを示す細胞株を得ることができなかった。そこで、昨年度までに作製していた、正常歯肉細胞株を用いて、歯周疾患におけるEotaxin-1による炎症制御機構の解明を行うこととした。小児・障碍者歯科の診療で、抗てんかん薬による薬物性歯肉増殖症はよく遭遇する歯周疾患である。抗てんかん薬による薬物性歯肉増殖症では、フェニトインが有名だが、その他の薬物でも歯肉増殖を生じるとの報告は多数存在する。そこで、抗てんかん薬として、第一選択となることの多い、バルプロ酸に注目した。バルプロ酸も副作用として歯肉肥厚が生じることが報告されているが、その分子メカニズムは解明されていない。そこで、バルプロ酸による薬物性歯肉増殖症における分子メカニズムとEotaxin-1を含めた炎症性サイトカインによる増悪の機序を解明することとした。正常歯肉細胞にバルプロ酸を投与すると、細胞増殖試験において、増殖傾向を認めた。
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Molecular Medicine Reports
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