研究課題
エストロゲンの発現が低下したアロマターゼ遺伝子欠損マウスでは、アロマターゼ欠損によって内臓脂肪および体重の増加を引き起こし、肥満によって脂肪組織中の単球走化活性因子(MCP-1)の発現が亢進し、末梢組織に浸潤することで、唾液腺にシェーグレン症候群類似の慢性炎症病変が生じることを報告している。この末梢組織に慢性炎症状態をきたしたアロマターゼ遺伝子欠損マウス、またはアロマターゼのインヒビターを投与したアロマターゼ抑制状態下のマウスを用いて、アロマターゼとマウスの顎関節における顎関節リウマチや、変形性顎関節症といった口腔領域でみられる慢性炎症病態との関連性を明らかにすることを目標に実験を行っている。これまでの研究では、アロマターゼインヒビターを腹腔内投与し、アロマターゼの機能を抑制したアロマターゼインヒビター投与マウスの内臓脂肪において、内臓脂肪中の炎症関連因子であるMCP-1、およびF4/80、TLR-4、NF-κBの発現の亢進を認めている。またアロマターゼインヒビター投与マウスの顎関節における病理組織学的検討をおこなったところ、アロマターゼインヒビター投与マウスの顎関節組織切片のHE染色、TRAP染色、サフラニンO染色では、アロマターゼ遺伝子欠損マウスと同様に、下顎頭の軟骨層の減少ならびにTRAP陽性破骨細胞数の増加を認めたことから、アロマターゼインヒビターの投与によるエストロゲン減少状態が顎関節の慢性炎症状態を引き起こし、顎関節リウマチや変形性顎関節症発症に関与している可能性が示唆された。
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