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2019 年度 実施状況報告書

歯の発生における上皮間葉相互作用でのCa2+応答の役割とエナメル芽細胞の分化

研究課題

研究課題/領域番号 17K17337
研究機関北海道医療大学

研究代表者

村田 佳織  北海道医療大学, 歯学部, 助教 (70781053)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードカルシウム応答 / イメージング / 歯の発生 / マイグレーション
研究実績の概要

本研究では、歯の発生過程における細胞内Ca2+応答とその関連遺伝子を可視化し、Ca2+応答と遺伝子発現の関連を明らかにすること、及び遺伝子発現の調節におけるCa2+応答の役割を明らかにすることを目的とする。細胞にはラット歯原性上皮細胞(SF2)とヒト歯髄幹細胞(DPSC)を用い、それぞれに異なる蛍光を発するCa2+センサーをレンチウイルスベクターを用いて発現させ、長時間ライブセルイメージングの実験系を確立し、自発的で間歇的なCa2+応答やマイグレーションを観察してきた。
これまでの研究でSF2細胞のCa2+応答がマイグレーションに関与することが示されている。今年度の研究で、成長因子(EGFやFGFなど)やケモカイン(CXCL12)がSF2細胞のマイグレーションに関与することが明らかになった。また、これらの受容体に対する阻害剤がSF2細胞の自発的Ca2+応答を抑制することが明らかになった。さらにSF2細胞のCa2+応答がP2Y受容体を介する反応であることが明らかになった。成長因子によるマイグレーションの促進が、ATPの放出によってCa2+応答を起こしている可能性が考えられる。
またSF2細胞は、共培養によってDPSCの自発的Ca2+応答を増加させることが明らかになっている。DPSCの単独培養によるCa2+応答はEGFRの阻害剤の影響を受けないのに対して、共培養によって増加したCa2+応答はEGFRの阻害剤によって抑制されることが明らかになった。このことからSF2細胞から放出される何らかの因子が、DPSCの遺伝子発現を介してCa2+応答を質的に変化させる可能性が示された。網羅的遺伝子解析の結果から、共培養やCa2+応答の抑制によって発現が大きく変化した遺伝子が多数あった。この結果に基づいて共培養による遺伝子発現変化やそれに対する阻害剤等の作用をRT-PCR法などで検討している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

阻害剤を使った解析によって、SF2細胞のマイグレーションに関与する成長因子やケモカインがCa2+応答に関係することを明らかにした。またマイグレーションによるATPの放出によるP2Y受容体の活性化が、自発的Ca2+応答に関与する新たな知見を得ることに成功した。さらにSF2細胞とDPSCの共培養によるDPSCの自発的Ca2+応答の増加において、DPSCが単独培養ではCa2+応答に影響を示さなかったEGFR阻害剤に対して、感受性を示す質的変化を起こすことが明らかになった。この新しい知見に基づいて、Ca2+応答を指標とした遺伝子発現の制御機構の解析を実施する。特に、DPSCのCa2+応答はP2Y受容体に依存しないことから、SF2細胞のCa2+応答を抑制した条件で共培養下のDPSCのCa2+応答と遺伝子発現解析が可能になった。(研究協力者:石田成美)
これまで研究で用いていたDPSCは継代によって細胞分裂能が低下し、それに伴って遺伝子発現パターンも変化するためRT-PCR法などで解析の再現性が乏しく難航していた。今回、新たにテロメラーゼを用いて不死化DPSCを作製して解析に用いている。これらの細胞を用いることによって、標的遺伝子の発現センサーを導入したDPSC細胞の作製と解析が行えるよう準備をしている。(研究協力者:蓑輪映里佳)

今後の研究の推進方策

これまでのマイグレーションアッセイとCa2+イメージングにより、SF2細胞のマイグレーションにおけるCa2+シグナルの役割が明らかになりつつある。今後は、Ca2+とマイグレーションの同時解析によって、それらの関係を明らかにする。またこれまでの解析で、無血清培地に使用するB27でマイグレーションが促進されることからB27の成分の一つであるインスリンが関与している可能性が示されている。そこでインスリンやインスリン阻害剤を用いてマイグレーションとCa2+応答に対する影響を解析する。
またCa2+応答と遺伝子発現の関連に関する解析では、次世代シーケンサーを使った網羅的遺伝子発現解析において、歯の発生に関与しているとの報告があるレチノイン酸やTGFβシグナルに連関する遺伝子に大きな発現量の変化を示すデータが得られている。これらの発現変化を定量PCRで確認すると共に、マイグレーションやCa2+応答に対する作用を明らかにする。
これまで研究の障害となっていたDPSCの問題が「不死化DPSC」の作製によって解消された。これによってこれまで遅れていた遺伝子発現解析と、その結果に基づいて行うプロモーターアッセイ用蛍光センサーの開発を速やかに実施する。さらにそれらを用いて、Ca2+応答と遺伝子発現解析の同時リアルタイム解析を実施する。

次年度使用額が生じた理由

育児休業により、研究を中断しており、2019年度は物品の購入などはしなかったため。次年度に研究を再開した際の研究に当てる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 歯原性上皮細胞のマイグレーションにおける成長因子とケモカインの相互作用2019

    • 著者名/発表者名
      村田佳織、石田成美、齊藤正人、谷村明彦
    • 雑誌名

      北海道医療大学歯学雑誌

      巻: 38 ページ: 1,7

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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