ハイドロキシアパタイトは生体適合性と骨伝導性に優れており、そのサイズをナノレベルまで縮小したナノサイズハイドロキシアパタイト(nano-HA)は骨置換性をも有した骨補填材として有用な材料である。また低出力超音波パルス(LIPUS)の照射は骨関連細胞に対してメカニカルストレスとして作用し、骨芽細胞の分化を促し、骨形成を促進することが報告されている。本研究の目的はヒト歯根膜細胞のnano-HAとLIPUSの併用による細胞分化促進効果を明らかにし、次世代型歯周組織再生誘導技術の開発のための研究基盤を確立することである。 昨年度はnano-HA刺激を加えられたマウス歯小嚢細胞株、未分化間葉系細胞株および前骨芽細胞株は中期骨分化マーカーであるオステオポンティンの遺伝子発現を誘導し、さらにマウス歯小嚢細胞株に対してセメント芽細胞株への分化を誘導するWnt3aとの併用刺激を行うことでWnt3a誘導性アルカリフォスファターゼ活性を増強することを示した。 今年度はLIPUS照射によるWnt3a誘導性アルカリフォスファターゼ活性増強のシグナル経路をさらに検討するために、レポーターアッセイを用いて同刺激における古典的Wntシグナル経路の転写活性を解析した。それにより歯小嚢細胞株においてLIPUS刺激は古典的Wntシグナル経路を誘導することが示唆された。 一方で硬組織形成細胞以外の細胞におけるnano-HAおよびLIPUS刺激の作用についても検討したところ、マウスマクロファージ細胞株に対してLIPUS照射が破骨細胞形成抑制因子であるオステオプロテグリンの発現を誘導することが示唆された。
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