研究課題
間葉系幹細胞(MSC)の移植は組織再生療法の有効な手段として注目を集めている。研究者らは間葉系幹細胞(MSC)の特徴をもつ歯根膜由来組織幹細胞の同種移植が拒絶反応を生じることなく歯周組織再生を顕著に促すことをこれまでに見いだし、現在はヒト臨床への応用へ向けた研究が進行中である。同種移植を臨床応用する際には、より再生能の高い細胞を移植に用いることで、より良い治療効果が期待される。その際、どのような細胞を選別すべきかを移植前に決定する必要があると考えられる。近年、分化能や細胞サイズ、細胞形態などにより、骨髄由来MSCの選別が可能となってきているが、歯根膜由来 MSCでは不明である。そこで本研究では歯根膜由来MSCを用いて、より再生能が高い細胞を移植前に予測し選別することが可能か否かを明らかにすること、またその選別を迅速に行う事を目的とした。本年度はヘルシードナー由来のヒト歯根膜由来MSCのプライマリーカルチャーを昨年度から継続して行い、細胞の性質について比較検討を行った。異なるドナー由来のMSCによりコロニーフォーミングアッイ(CFA)、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性、分化能(骨分化誘導・脂肪分化誘導)の違いがより明確になった。また細胞形態のイメージングも行い、骨分化誘導を行った細胞と行わなかった細胞形態の違いを明らかとした。これらの結果から同種移植に使用するドナーをあらかじめ選別し、分化能を予測しうると考えられた。
3: やや遅れている
培養環境の整備が進み、ヒト歯根膜由来MSCの培養をn数を増やして行うことができた。また細胞の性質の違いも順調に明らかとなっているが、性質によるグループ分けまでは至っていないため、今後の課題となっている。
ヒト歯根膜由来MSCの性質の違いについて、細胞のサイズ、サイトカイン解析、免疫調節機能解析など含めてさらに詳細に解析した後に、グループ分けを行う。また細胞形態のイメージング技術を用いた再生能の予測により従来の分化誘導試験に要する時間の迅速化を試みる。
培養環境が整った事で、研究を効率的に行うことができたため、使用経費を削減することができた。次年度使用額については、今後も継続して行う予定の細胞形態イメージング試薬が高額なため、こちらの購入に使用する。
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Tissue Engineering Part A
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