研究課題
本研究では、結紮誘導歯周炎モデルに16S rRNAによる細菌叢解析およびRNAシーケンスによる網羅的な解析を行い、急速な歯周組織破壊に関わる細菌叢の変化、遺伝子発現・変異を明らかにする。また、共通の変化がヒト歯周組織で起きているかどうかを検討し、急速な歯周組織破壊のメカニズムを解明することとした。平成29年度は、結紮誘導歯周炎のモデルマウスの作製および結紮または非結紮の歯肉組織に対し、RNA-seq解析を行い、遺伝子発現を網羅的に調査した。またRNA-seq解析によって得られた有意に異なる遺伝子に関して、qPCR法にて定量をおこなった。さらに結紮誘導歯周炎によって惹起された歯槽骨の吸収量を実験動物用3DマイクロX線CT(CosmoScan GX, Rigaku)にて撮影し、評価した。また歯周組織の切片を作製し、HE染色にて付着の喪失および骨吸収を評価した。RNA-seqおよびqPCRの解析において、S100A8が結紮惻の歯肉組織から有意に高発現していたことから、S100A8は急速な歯周組織破壊に関与していることが示唆された。歯周組織の切片を作製し、S100A8タンパクの発現部位およい発現量を免疫組織染色をおこない評価した。その結果、結紮惻の接合上皮部にS100A8が高発現しており、また経時的に発現量が上昇していたことがみとめられた。上記の内容は、平成29年9月にボストンにて開催された103回米国歯周病学会学術大会に於いて、「Differentially expressed genes analysis by RNA-seq : Inflamed periodontal tissue of ligature-induced periodontitis in mice」という題目でポスター発表をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、結紮誘導歯周炎モデルマウスの作製および歯肉組織のRNA-seq解析、qPCR法による遺伝子の定量、実験動物用3DマイクロX線CT撮影、歯槽骨吸収量の評価、歯周組織切片を作製、各種染色をおこない、結紮による歯周組織破壊の評価を網羅的におこなった。また、平成29年度の研究内容は、平成29年9月の103回米国歯周病学会学術大会に於いて、「Differentially expressed genes analysis by RNA-seq : Inflamed periodontal tissue of ligature-induced periodontitis in mice」という題目でポスター発表をおこなった。一方、RNA-seqで候補となったS100A8以外のタンパクの発現を免疫組織染色にて確認することがなかなかうまくいかず、やや進行の遅れとなっている。また、ヒト歯周組織のサンプル採取のための倫理審査の進みも時間がかかってしまっている状況である。
研究計画に基づいて、結紮側にて有意に発現した遺伝子がコードするタンパクが歯周組織のどの部位に発現するか、免疫学的評価をおこなう。また、結紮惻の歯周組織における細菌叢変化を明らかにするために、歯肉組織からDNA抽出ならびに16S rRNAによる細菌叢解析を行う予定である。さらにヒト歯周炎患者の歯肉よりRNA抽出をおこない、急速な歯周組織破壊に強く関与していると考えられる遺伝子の発現を明らかにしていく。
今年度に使用する予定だった実験計画がやや遅れたため、16S RNA解析など物品費を次年度に繰り越すこととなった。また、米国にて学会発表をおこなったが、次年度に物品費を大きく使用することになるため今年度は請求しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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