研究実績の概要 |
急性期脳梗塞患者の歯周病菌抗体価を測定し、歯周病菌抗体価と転帰との関連や、菌種による影響の違いについて明らかにすることを目的とした。2013年1月から2016年4月の間で当院および共同研究機関に入院した急性期脳梗塞患者を前向きに連続登録し、入院時の歯周病菌抗体価や背景因子と発症3か月後のm-RSとの関連を統計学的に解析した。入院時の患者血清より9菌種16菌体の歯周病菌抗体価をELISA法にて測定した。研究期間中550名の患者が登録され、発症前のm-RS≧2の症例を除いた445例を解析対象とした。平均年齢は71.9±12.3歳、男性の割合が56.0% (n=249)で、入院時NIHSSの中央値は3 [1-6]だった。発症3か月後の転帰不良例(m-RS≧2)は34.2% (n=152)で、転帰不良例ではFusobacterium nucleatum (Fn10953)、Treponema denticola、Tannerella forsythia、Campylobacter rectusに対する抗体価が有意に高かった。発症3か月後の転帰不良に関連する因子について多変量解析を行ったところ、年齢 (odds ratio 1.02, 95% CI 1.00-1.05)、入院時NIHSS (odds ratio 1.30, 95% CI 1.22-1.40)に加えて、抗IgG Fn10953抗体価 (odds ratio 1.57, 95% CI 1.08-2.33)が独立した有意な因子として抽出された。入院時の歯周病菌抗体価を測定することにより、脳梗塞患者の発症3か月後の転帰を予測できる可能性があることを示した結果と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた平成29年度の研究計画としては、急性期脳梗塞患者の歯周病菌抗体価の測定(急性期脳卒中患者(発症7日以内)を前向きに連続登録し、患者の同意を得た上で血清を採取する。脳卒中病型はTOAST分類により分類する。患者血清は広島大学病院に集積し、歯周病菌抗体価を測定する。歯周病菌抗体価(Pi26511, PgHW24D1, PgSU63, Pg381, Td)の測定はそれぞれ歯周病原菌3菌種5菌体に対する血清 IgG 抗体価をELISA法により測定する。対照として非脳卒中患者の歯周病菌抗体価(Pi26511, PgHW24D1, PgSU63, Pg381, Td)の測定を行い、この抗体価の平均値+2SDを基準とし、これ以上の抗体価を示したものを陽性とする。)、急性期脳梗塞患者の炎症マーカー、細菌のエンドトキシンの測定および歯周病菌抗体価との関連の検討、急性期脳梗塞患者の転帰と歯周病菌抗体価との関連についての検討であり、おおむねこれらの検討は計画通りに施行されていると考えられる。
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