研究課題
申請者はこれまでに、間葉系幹細胞(MSCs)移植歯周組織再生治療技術として、MSCsと細胞自身が産生する細胞外基質(ECM)をもちいて立体的間葉系幹細胞集塊Clumps of MSCs/ECM complexesを樹立していた。C-MSCsは直径1mmほどの細胞集塊で、人工材料を用いることなく欠損組織に移植可能で、骨・歯周組織再生を促進する。C-MSCsの臨床応用のために、その生物学的細胞性質を明らかにする必要がある。特に、C-MSCsは浮遊状態で培養される3次元的な細胞集塊であるため、独特なメカノトランスダクションが生じている可能性が高い。そこで、本研究課題では、C-MSCsに生じるYAP/TAZメカノトランスダクション経路について解析を行った。その結果、C-MSCsは浮遊状態にあるため、場の硬さを感知できず、YAP/TAZ活性が著しく低下していることがわかった。さらに、そのYAP/TAZ活性の低下がC-MSCsの骨分化を抑制し、軟骨・脂肪分化傾向に導くことがわかった。一方、C-MSCsを骨分化誘導培地で培養するとI型コラーゲン(COLI)の産生が増加し、ECMの硬化が進むことでYAP/TAZ活性が上昇することが示された。さらにこの上昇したYAP/TAZ活性がさらにCOLIの産生を促進するpositive feed back loopを形成し、YAP/TAZ活性の継続的な上昇に関与することがわかった。このYAP/TAZ活性の継続的な上昇が、通常のC-MSCsでは見られない効果的な骨分化傾向に導かれることも明らかにした。本成果をStem Cell Research & Therapyに論文報告した。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件)
Stem Cell Res Ther
巻: 9(1) ページ: 342
10.1186/s13287-018-1085-9