心内膜炎、動脈硬化、冠状動脈疾患等において歯周病細菌によるバイオフィルムが病変部位より検出されることが知られている。歯周病患者の 8 割以上に生息している主要な歯周病細菌である Porphyromonas gingivalis (Pg) の分泌タンパクには、強い病原性を持つ Aggregatibacter actinomycetemcomitans (Aa)の形 成したバイオフィルムを剥離する働きがあることを見出した。一方でStreptococcus gordonii によって Pg のバイオフィルム形成阻害されることが報告されている。本研究では、心疾患において検出される Pg バイオフィルムが他の主要な歯周病細菌によって、どのように口腔内バイオフィルムから剥離され血流に乗っているのかを解明していくことを目的とする。 各種細菌の培養上清中のプロテアーゼについて Pg バイオフィルム剥離効果、凝集阻害効果を測定し、剥離効果のあった培養上清中のプロテアーゼを同定する。 Pg の付着、凝集阻害因子に対してプロテオーム解析を行い、目的タンパクを同定する。歯周病細菌のある病原性を担うタンパクについて同定することから始まるので、タンパクの分画や抽出を迅速に行う必要があると考えている。また、菌の持つタンパクは、これまでの研究から単量体ではなく複合体を形成して高分子タンパクを形成している可能性があると考えられるため、SDS-PAGE と合わせて 2D-PAGE にて分画を行うことにより複雑なバイオフィルム構造の解明に繋がり、慢性歯周炎の進行を阻止し、全身疾患に波及する歯性病巣感染の機序解明と効果的な予防法へと貢献するものと考えている。
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