研究課題/領域番号 |
17K17357
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
菅野 真莉加 昭和大学, 歯学部, 助教 (40721220)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / 抗酸化作用 / 歯肉上皮 |
研究実績の概要 |
転写因子Nrf2(NF-E2 related factor 2)は細胞の酸化ストレス耐性に関わることが知られている。非ストレス下の細胞ではNrf2は細胞質で分解されて核内に移行できないが、細胞が酸化ストレスなどに曝されると、Nrf2の分解が阻害されて活性化し核内に移行する。核内に移行したNrf2は各種炎症性サイトカイン産生を抑制する分子を発現して、抗炎症および抗酸化効果に寄与する。Nrf2の炎症抑制メカニズムについて、最近までは活性酸素種を減らすことで炎症を軽減していると考えられてきたが、Nrf2は炎症性サイトカインであるIL-6やIL-1βの遺伝子発現を阻害して炎症を抑制していることが明らかとなっている。このように、Nrf2が酸化ストレスを統一的に制御し抗炎症作用をもたらすことは過去の様々な研究で報告されているが、歯周組織において生体防御を最前線で担う歯肉上皮におけるNrf2の機能については十分に解明されていない。 そこで今年度は、酸化ストレスにさらされた歯肉上皮細胞におけるNrf2の挙動を解析した。ヒト歯肉上皮細胞株(Ca9-22 cell)を酸化ストレスとして過酸化水素(H2O2)で刺激し、非刺激時と比較した時の核内Nrf2量の変化を評価した。Nrf2は活性化すると核内に移行する転写因子であるので、H2O2刺激後のCa9-22 cellsを回収して核抽出核分と細胞質核分を分離調製後、核抽出核分中の転写因子Nrf2のDNA結合活性を比色法で検出した。その結果、Ca9-22 cellsにおいてH2O2濃度依存的に核内Nrf2移行量の増加傾向を認めた。 また、Nrf2の核内移行を肉眼的に観察するために抗Nrf2抗体を用いて共焦点レーザー顕微鏡でNrf2の細胞内局在を観察した。しかし、安定した実験プロトコールの確立が困難で、結果としてはまだ予備検討の段階にとどまっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予期せぬ実験室の補修・整備があり、実験開始が遅れてしまった。また、当初計画していた実験プロトコールでは再現性が不十分であったため、修正するための予備実験に多くの時間を要し、計画通りの進捗が達成できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画の中にマイクロアレイによるNrf2の標的遺伝子の網羅的解析を実施するために受託解析サービスを利用するという計画があるが、更なる研究の推進方策として、受託解析サービスへの依頼経験がある同研究室内の研究者に研究協力を求める。また、免疫組織学的解析については上皮細胞の取り扱いに慣れている昭和大学歯学部口腔病理学教室に研究協力をお願いしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は研究計画の進捗状況が当初の予定よりやや遅れており、本来計画通りであれば必要となる情報収集のために予定していた学会参加を見合わせたため、次年度使用額が生じた。今後の研究の推進方策を達成するために必要な支出額であるため、次年度以降に適切に使用することとする。
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