研究実績の概要 |
菌体内毒素であるLipopolysaccharide(LPS)の血中への流入経路として、腸内から血中に移行する可能性を考察した。腸内環境は常在菌以外の細菌やそのLPSの持続的な侵入によって、腸内細菌叢が変化すると思われる。そこで、腸内細菌叢が変化した際、腸内から血中への細菌やLPSの流入が容易になるとともに、その種類も増加するのではないかという仮説を立案した。 近年、腸内細菌叢の変化が腸のタイトジャンクション構成タンパク質の一種であるZonulinに影響を与えることが判明している。これにより細菌のLPSやZonulinが血中に侵入するようになることから、平成30年度の研究では、野生型雌C57BL/6マウスにP. gingivalisを口腔内より投与した後の血中Zonulin量を定量した。その結果、P. gingivalis非投与群と比較して投与群において血中Zonulin量が有意に増加していた。よって、P. gingivalisが腸管に侵入すると、腸管のタイトジャンクションが障害を受け、P. gingivalisもしくは腸内細菌のLPSが血中に移行して全身を循環する可能性が示唆された。 さらに、代表的な腸内細菌である大腸菌のLPSがBBBに与える影響をBBB in vitroモデルを使用して検討した。P. gingivalisと同様血管内側の細胞培養液に1.0, 10.0 μg/mlの各濃度で添加した。コントロール群としてsodium fluorescein (Na-F)を使用した。一定時間後、脳内側の細胞培養液を回収し、細胞培養液中に含まれるLPS濃度を測定した。結果、同濃度の場合P. gingivalis LPSよりも大腸菌LPSの方がBBBの物質透過性が上昇し、より多くのLPSがBBBを通過していることが判明した。
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