研究課題
本研究は、誤嚥性肺炎を想定し、歯周病原細菌と肺炎球菌(S.Pneumoniae)の混合感染による実験的肺炎モデルマウスを確立し、インターロイキン17 を共通な要素とするサイトカイン・ネットワークによる免疫制御および感染防御機構を解明することを目的としている。まずは歯周病原細菌であるP.gingivalis と 肺炎球菌の混合感染による実験的肺炎モデルマウスの作製を行った。肺組織は感染1日後で回収し、各種解析を行った。細菌の播種は経気道的に行い、実験群はPBSのみを投与した群(PBS群)、 肺炎球菌単独感染群、混合感染群とした。病理組織学的検討(ヘマトキシリン・エオシジン染色)において、肺炎球菌単独感染群および混合感染群では好中球と思われる炎症性細胞浸潤や肺胞構造の破綻が認められた。混合感染群では肺炎球菌単独感染群と比較し、上記所見がより高頻度に観察できた。また、qPCR法にて遺伝子発現の検討を行った。ケモカインであるKCおよびMIP2の遺伝子発現ではPBS投与群と比較し、肺炎球菌単独感染群および混合感染群で上昇していた。さらに、混合感染群では肺炎球菌単独感染群より遺伝子発現は増強していた。以上より,細菌を感染させた実験群では実験的肺炎が惹起されていることが確認でき、その炎症の主体は好中球が担っている可能性が示唆された。また、歯周病原細菌と肺炎球菌の混合感染群ではより強い炎症が生じている可能性が示唆された。
3: やや遅れている
当初予定していた菌数で感染実験を行ったところマウスの生存率が低く、効率的な実験が行えなかった。菌数を下げてしまうと惹起される肺炎の程度が減弱してしまうため、至適と考えられる菌数およびP.gingivalis と S.Pneumoniae の混合比率の検討に時間がかかっている。
感染させる菌数および、P.gingivalis と S.Pneumoniae の混合感染の比率は継続して検討を行う。マウスの生存率、病理組織学的所見、ケモカインや炎症性サイトカインの遺伝子、タンパク発現の解析の結果をふまえ、至適と考えられる条件を決定する。条件が決定次第、当初の計画通り研究を進めて行く。
購入した備品(gentleMACS Dissociators)が計画より安価で購入できたこと、消耗品使用が計画より少なかったため。次年度の消耗品購入に使用する。
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PeerJ
巻: 5 ページ: e2999
10.7717/peerj.2999
International Journal of Molecular Sciences
巻: 18 ページ: 154
10.3390/ijms18010154