超高齢社会に突入した我が国においては、高齢者に対する適切な口腔機能管理の重要性が指摘されており、その機能を維持・向上するための様々な口腔機能訓練法が用いられている。本研究はニューロフィードバックトレーニングを応用した新しい口腔機能訓練法を開発し、その有効性を評価することを目的としている。昨年度の結果に基づき、口腔機能訓練タスクとして“咬合力維持タスク”を設定し、健常歯列を有する若年者6名(若年者群)、健常歯列を有する高齢者6名(高齢者群)、上下無歯顎に対してインプラントを用いた固定性補綴装置を装着している高齢者6名(高齢インプラント群)を被験者とし実験を行った。各被験者のタスク中における前頭前野の脳血流量および咬合力を測定した。また外部情報として視覚情報、聴覚情報を付与した群と、コントロールとして外部情報を与えない群の計3群を設定した。視覚・聴覚・コントロールのすべてにおいて若年者群が最も高く、次いで高齢インプラント群、高齢者群であった。また、視覚情報付与群がすべての群において最も高い血流量の増加を示し、視覚・聴覚情報付与群においては高齢インプラント群と、高齢者・若年者群との間に有意な差が認められた。咬合力に関しては各被験群間で有意な差は認められなかったが、高齢インプラント群の咬合力の実測値は3群間で最も高い値を示した。若年者群、高齢者群では外部情報付与時の咬合力は、指示した範囲内に収束した。咬合力の変動に関しては、高齢者群、高齢インプラント群では若年者群と比較し、外部情報付与時に咬合力の変動が大きくなる傾向が認められた。測定システムの構築、被験者の募集が遅れたため従来法との比較がまだできていないが測定器材、材料はすでに購入済みであるため、今後スムーズに研究を行うことが可能である。今後、実質的な口腔機能向上の検討、従来法との比較といった臨床試験を行う予定である。
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