研究課題/領域番号 |
17K17375
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹内 研時 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10712680)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症 / アルツハイマー病 / 歯周病 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
本年度は、唾液中の酸化ストレスマーカーと詳細な歯周病態が認知症と関連するかを検証した。初めに、平成24年度久山町生活予防健診を受診したアルツハイマー型認知症(AD)の既発症患者40名と同健診受診者の中から性・年齢をマッチングさせたコントロール者40名の唾液検体を対象に、フリーラジカル解析装置Free Carrio Duoを用い、酸化ストレス(d-ROMsテスト)と抗酸化力(BAPテスト)の測定を行った。AD患者集団とコントロール集団のd-ROMの値はそれぞれ25.7±1.8と24.4±2.9であった。また、AD患者集団とコントロール集団のBAPの値はそれぞれ3390.3±936.4と3759.1±1253.3であった。AD患者集団はコントロール集団と比べてd-ROMは高い値を示し、BAPは低い値を示したが、有意差は認めなかった(P > 0.05)。 次に、先ほどと同様に平成24年度の健診受診者から60歳以上の779名を選び、歯周病の病態とADとの関連を検討した。歯周病態は歯周ポケット深さ(PD)やアタッチメントロス(AL)、歯周検査時出血率(BOP)にて評価した。対象者の4.9%にADが認められた。PDが4mm以上の箇所を持つ群と持たない群の間でADの有病率に有意差は認めなかった(P = 0.220)。同様に、ALが4mm以上の箇所を持つ群と持たない群の間でもADの有病率に有意差は認めなかった(P = 0.249)。一方、有意差は認めなかったものの、BOPが10%以上の群は10%未満の群に比べてADの有病率が高い傾向が認められた(P = 0.099)。さらに多変量解析にて交絡の疑いのある因子を考慮したところ、BOPが10%以上の群は10%未満の群に比べてADである割合が1.6倍高い傾向にあったが、有意な差は認めなかった(P = 0.220)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であったアルツハイマー病患者とそのコントロール集団の唾液検体の酸化ストレスと抗酸化力の測定を終えることができた。また、歯周病の病態の中で、現在や過去の歯周病の進行をそれぞれ反映するポケット深さやアタッチメントレベルよりも、炎症状況を反映する歯周検査時出血率の方がアルツハイマー病に代表される認知機能障害に関わる可能性を示唆する結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は2007年から2012年の間に認知症を発症した者の中からアルツハイマー病患者を中心に、同年の久山町住民健診時に観察された口腔関連リスク因子と頭部MRI評価による海馬萎縮度の関連を横断的に分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成24年度に採取した唾液検体を対象とした酸化ストレスと抗酸化力の測定件数が予定よりも少ない数で済んだことと、実験が順調に進んだことで次年度使用額が生じた。次年度は持ち越した助成金を考慮し、平成19年度に採取した唾液検体の測定も新たに行うため、試薬等を購入する予定である。
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