研究課題
本年度は、これまでの研究から提唱される口腔関連リスク因子と頭部MRI を用いた脳萎縮・海馬萎縮との関連を検討した。2012年の久山町高齢者調査で頭部MRI 検査を受け、かつ同年の生活予防健診(歯科健診含む)を受診した65歳以上の住民1,052 名の成績を解析に用いた。頭部MRIの解析から、頭蓋内容積(ICV)、全脳容積(TBV)、海馬容積(HV)を用い、脳萎縮の程度について、TBV/ICV 比(脳全体の萎縮の指標)、HV/ICV 比(海馬萎縮の指標)、HV/TBV 比(全脳の中で海馬に特異的な萎縮がみられるかどうかの指標)の3 つの指標を用いて評価を行った。初めに、歯の本数と脳萎縮、海馬萎縮の関連の検討を行った。その結果、TBV/ICV 比は、28歯以上群が78.8%、20-27歯群が78.3%、10-19歯群が78.0%、1-9歯群が77.2%、0歯群が77.0%と、歯の本数が少なくなるにつれ低い値を示す傾向が見られた。HV/ICV 比とHV/TBV 比についても同様の傾向を示した。多変量解析にて、性別や年齢、社会経済状態、既往歴、生活習慣等を調整した結果、28歯以上群に比べ、0歯群はTBV/ICV 比が有意に低くなった。HV/ICV 比とHV/TBV 比については有意差を認めなかった。次に、歯周病の有無(歯周ポケット4mm以上の箇所が一か所以上の有無)と脳萎縮、海馬萎縮の関連の検討を行った。その結果、TBV/ICV 比は、歯周病なし群が78.4%に対し、歯周病あり群は78.2%とわずかに低い値を示し、HV/ICV 比とHV/TBV 比についても同様の傾向であった。多変量解析にて、先ほどと同様に共変量を調整した結果、歯周病なし群とあり群の間でTBV/ICV 比、HV/ICV 比、HV/TBV 比のいずれにおいても有意な差は認めなかった。
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